我が愛すべきハンガリーのジレンマ 

第2号 2001年2月16日
   ハンガリー人の懐に入れば天国、よそ者扱いされると地獄?

   他人との境界線がとても低いので、見ず知らずの人の身内
   になるのが非常に簡単。

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   ハンガリー人はとても人がよい。
   明るくて人懐っこくてやさしい。
   道を訪ねれば言葉が通じなくったって一生懸命教えてくれま
   すし老人や小さな子供にはすぐに席を譲ります。
   (人間の基本としては本当は当たり前のことで海外旅行をす
   ればどこでもそんなやさしさには出会えますよね。今の見て
   見ぬ振りの日本の状況の方が珍しいのかも)

   悪いところは?そりゃぁ、もちろんあります。
   仕事が好きではないのでサービスが悪い。
   面倒くさがるため、こちらが正当な申し出(スーパーで物を
   購入するとか、郵便局で手紙をだすとか)をしても聞いてく
   れないことが頻繁にあります。
   旅行者の方で悪いサービスにあたって気分を悪くされたまま
   日本に帰られ“ハンガリー人は優しくなかった!”という残
   念な想い出がお土産になってしまうこともあるし、先進国か
   ら来たハンガリーに住んでいる人々は“だからハンガリー
   人は!”と怒っています。

   多くのヨーロッパ人にとって基本的には仕事とは苦役以外の
   なにものでもないのです。
   夏休みのバカンスはどこに行くかで神経が散漫するためその
   前後は仕事にならないとか2週間担当者がいなくなって処理
   が進まないといった話はハンガリーだけでなく他のヨーロッ
   パ諸国で駐在している日本人会社員の方やヨーロッパ諸国と
   仕事の取引をしている日本の方からよく聞きます。

   それに比べると日本人や中華系の人々は仕事自体に喜びを見
   いだすようですね。
   4時間でできる仕事を8時間与えられたら、ヨーロッパ人は
   8時間かけてゆっくりこなし、日本人は4時間で(もしかし
   たらもっと早く)終わらせ、倍同じ事をする。
   そんな一生懸命さが今の経済発展の素地をつくっているので
   しょう。

   “仕事は苦役”のヨーロッパ感覚の例に漏れず、(いや更に
   輪をかけて)ハンガリー人は12時間ぐらい使い、さてどれ
   ぐらい仕事を終わらせるのか。(というより終わらせる意志
   があるのだろうか)

   ブダペストには、今でこそ大きくてきれいなデパートやいつ
   でも物が揃っているスーパーマーケットがありますが、一昔
   前までは“今、欲しいものがそこにあったら即購入”が基本
   でした。
   同製品が次回いつ入ってくるかなんて以前に、もう2度とお
   目にかかれないかもしれないからです。
   ですのでパン屋さんで暖かい焼きたてのパンができると、ま
   ず店員が“それ私一個買うわね!”と予約。
   棚に並ばれるお客さん用のパンは硬いのです。
   “お客様は神様です”が当然で育った私には信じられないこ
   とです。
   まずは身内から?そしてその精神は脈々と今の若い世代にも
   継がれています。

   では逆から見れば、身内に入ってしまえば暖かいパンが手に
   入るということか!

   言葉も通じないし、外国人だし、そんな簡単に彼らの身内に
   なれるのかって?
   そう、簡単なのですよ、とても。
   そこがハンガリー人の暖かいところなのです。

   レストランでよくある傾向は、お客として注文しているのに
   店員は訪ねてきている友達とべらべら話していて一向にこち
   らに気をかけてくれない。
   何でこちらが頭を下げて“注文させてください”とお願いす
   るのか、こっちは金を払う客だぞ!!(いや、実はこれが元
   共産的な姿勢なのですが)
   来訪の友人にはただでコーヒーを出し、いい席に座らせて自
   らも座り込み昨日のテレビ番組の話を永久的に話している。
   自分があの友人側だったらなぁ、ただでいい席でコーヒーの
   めるのに。

   そう、それが正解、そうすればいいのです。

   知り合いのレストランに“こんにちわー、お久しぶりです”
   と挨拶に行けば“いやいや、良く来た、何が飲みたいかい?”
   から始まり、“最近はどうだい、様子は”といいながらいい
   席に座らせてくれます。
   昨日は初めて入ったレストランで従業員にないがしろにされ
   ていらいらして冷めた料理を食べていたのに、今日はそのい
   らいらしているお客さんを背中に一番いいサービスを受けて
   いる。

   そんなにレストランや喫茶店に知り合いがいるか!
   もちろんその通りです。
   ではこれから知り合いになりましょう。

   浮気をしないで同じ店に何度も何度も通ってそこの従業員と
   仲良くなればもうあなたは“知り合い”の一人のリストに入
   ります。
   私は、ハンガリー人は他人との境界線がものすごく低いと日
   々感じています。
   レストランに限らず、靴屋さんでも郵便局でもいつも同じと
   ころに通いましょう。
   にっこり笑っていつもと同じ人に頼めば、人懐っこいハンガ
   リー人は自分の身内として懐にいれてくれるため、ほかのお
   客さんをしりぞけてサービスしてくれます。

   クリスマス時期にたくさんの出店がでていて、ホットワイン
   をよく飲みに行っていた時のことです。
   たくさんでている出店をあちらこちら浮気しないで、同じと
   ころに通っていました。
   ちょっと旅行者でたてこんでいてもカウンター越しに始めて
   きたお客さんをしりぞけて“今日も同じかい?”なんていい
   ながらまず自分に注いでくれるのです。
   こんなときは“あぁ、ハンガリー人って優しいなぁ”と心底
   思うのです。

   それは自分を優越感に浸らせてくれるという傲慢さではなく、
   見ず知らずの人間でも少々の会話で仲間の輪にいれてくれる
   ということ。
   他人への冷酷さと“知っているもの”への懐の深さのアンバ
   ランスさが非常に愉快です。

   そんなに何回も通うほど用事はない?お金はない?
   通うって、2回目でもう既にあなたは立派なリピーター。

   この店で買うよりあっちで買う方が安いから、経済的関知か
   らすると全然損をするですって?

   今の日本では、人間同士のコミュニケーションが足りず人と
   の触れ合いを探していると言われています。
   一円でも多く会社に利益があがるように“お客様は神様”が
   異常に発達してしまったため身内よりも他人様の方が大事に
   なってしまったことがその結果ではないかと海の向こうから
   日本を眺めてみて思うのです。
   安さ、品質の良さだけに走っていろいろな場所を巡るより、
   浮気をせず、一円多く払っても暖かく迎えられた方が心は暖
   かいと思いませんか?

   サザエさんだって三河屋さんがお勝手からご用をいつも聞き
   に来てくれます。
   大量生産しているがために安く売ることができるお米をスー
   パーマーケットで購入しても、米飢饉の時にスーパーマーケ
   ットはサザエさんのために他のお客さんに内緒でお米を確保
   しておいてはくれないのです。

   そんなハンガリーにも大型スーパーが続々と導入されている
   ため小売り業の営業が苦しくなっています。
   小さいお店でのちょっとした会話も大型店ではあまり見かけ
   られません。(それでも日本と比べればレジのお姉ちゃんと
   お客さんはよく喋っていますけれど)

   暖かいハンガリー人でさえ、最近は都市部の人間が昔に比べ
   て優しくなくなったと高齢者が残念がるのは、やはり経済一
   辺倒という一因もあるのではないでしょうか。
   都市部の人間については、世界中で言われている傾向だそう
   ですけれど。

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   まだ第2号発行ですが、既にハンガリーへ思いを馳せている
   方から多くのメールをいただきましてありがとうございます。
   ここ2年ばかり日本へ帰っていませんので“現在”の日本と
   比較するときに多少ずれが生じるかも知れません。
   その時にはご指摘いただければ幸いですし、またこんなこと
   はハンガリーではどうなっているかなどのご質問等もお待ち
   しておりますので下記メール・アドレス宛まで宜しくお願い
   いたします。
   次回は“目の前の収入、国家利益には全然関係なし!”と題
   してお送りいたします。
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