我が愛すべきハンガリーのジレンマ

第3号   2001年2月23日

       目の前の収入、国家利益には全然関係なし!

   日々の生活に埋もれて生活が安定しないハンガリーの国民に国
   益を考えてほしいなんてことは望まない。ならば国民をひっぱ
   っていくはずのリーダーや、ひいては国家に期待したい。でも
   リーダーや国が自分のポケットを暖めることしか考えていない
   のなら国民もそれを真似るだろう。未だに“豊かさ”の基本で
   ある衣食住を足りさせるために奮闘する現在のハンガリーと、
   今の頼りない政治を繰り広げる日本を同じと見ることはできな
   い。もう日本は終戦後の国造りを終え基盤を固めたのだから。

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   工事が着手さえされないブダペストのメトロ4番線の構想。現
   在ブダ側とペスト側に分かれたブダペストをつなげるドナウ川
   の下を走る地下鉄は2番線のみ。交通渋滞を緩和する意味でも
   恐らくブダペスト市民が待ちこがれている。政治家達は長々と
   議論するばかり。日本の私企業からも多額の援助金も貰ってい
   るのに、その資金はどこに行ったのか?政治家のポケットへ?
   国民は思う。ならば、自分たちだって目の前で取れるお金はポ
   ケットに入れてしまおう。国や政治家の私的ポケットを膨らま
   せるためのお金は極力払わないように。

   以前冊子を数万部印刷会社に注文した時のこと。訪れた印刷会
   社は最新式の機械などが入っている洒落た事務所で、若いスタ
   ッフは仕事の段取りをてきぱきと的確に熟していた。ハンガリ
   ー特有の、書類が山積みで陰気臭い事務所の中でお喋りばかり
   の事務員がやりたくない仕事を“できない”(単にやりたくな
   いだけ)と言って逃げる従来のハンガリーの会社とは違った。
   提示された見積りが高かったので担当者に再度電話をし、領収
   書はいらないから印刷代を半額にするよう値段交渉をすると、
   担当者が電話の向こうで上司とぼそぼそ話しているのが聞こえ
   る。数十秒後に“OK”の回答が。今回の売上げはこの印刷会
   社の経理に計上されず、そっくりそのまま担当者とその上司の
   ポケット・マネーになったことが予想される。ハード(オフィ
   スやOA機器)が先進国のスタンダードに限りなく近くなって
   も、ソフト(ハンガリー人従業員)は会社など集合体全体の利
   益より個人の目の前の収入を先にとるという考えが、資本主義
   という波を知っているはずの若い世代にも着実に受け継がれて
   いるのを垣間見た。
    
   修理工とも、ワインの専門店とも、物件を賃貸する大家とも“領
   収書どうする?”は合言葉みたいなものだ。小さい会社や個人
   経営の経理は、税金の支払いは毎月ではなく四半期や年に一回。
   ここで注意書きとして述るが、経済企画省が企業規模の区分分
   けしている資料には、全国77万の法人の内大企業に位置づけ
   られている従業員数250人以上の企業は僅かに0.2%とあ
   る。従ってここで例題として取り上げる店や会社は個人事業や
   零細企業ではない。決算では税務署から還付されるべき税金と
   納めるべき税金の相殺をするが、税務署からの還付金があまり
   にも多額だと返してくれない。この多額という額も約30万フ
   ォリント以上、日本円にして約12万円だ。税金が還付されな
   いなら最初から支払わないと人々は考える。銀行でハンガリー
   通貨フォリントに対し定期預金で年利約9%の金利がつき、イ
   ンフレ率が年10%近くあるような国で、何かと道理のいかな
   い屁理屈をつけて返してくれない還付金を一年に一回待つので
   あれば最初から納税しないと考える方が賢い。(全く納税しな
   いと言うわけではないが)

   以前住んでいたマンションのオーナーは外国人で会社を経営し
   ている。“会社を持って6年間、一度として還付金なんて返っ
   てきたことないよ。”一瞬耳を疑ったが、会社を設立して一年
   目の決算時に確信した。還付されない理由は一年を通して上半
   期に会社の売上げがなかった為(会社を設立したのは6月だか
   ら当たり前、下半期から売上げが発生した)。そのように会計
   士に説明されても納得いくわけがない。しかしその会計士が担
   当している別の会社も同様の仕打ちを税務署からされたという。
   どういう条件下で還付金が手に入るのか確認すると、もう笑う
   しかなかった。翌年の売上げが今年の4倍になったら。もし本
   当に翌年の売上げが4倍になっても、屁理屈を言われて同じ状
   況になるのは想像にかたくない。

   本来なら国に払うべき税金が国民のポケットに入ることがハン
   ガリーではごく自然に見えてしまうのは何故か。それは領収書
   を発行しない例を挙げるまでもなく、方法が非常に稚拙だから
   だ。単純に店でレジを打たない、お客さんにはレシートを発行
   しない。レジを打たない対象は外国人や旅行者。彼らはマルサ
   ではない可能性が99%だからだ。そのためレストランや店が
   私にレシートが発行しない頻度が高いのは当然。こちらは脱税
   のお手伝いだ。だからカードで支払う時の店員のがっくりする
   瞬間は見逃せない。

   余談になるが、いつもお世話になっている弁護士からも一回も
   領収書を発行してもらったことがない。言われるがままの値段
   をいつも封筒にいれて渡すだけ。1時間相談しても、電話で泣
   きついて的確な法的アドバイスを頂いても、一度も顧問料を請
   求されたことがなく(日本では時間単位で請求されるだろう)、
   書類処理が発生したときのみ手数料のようなものを払うだけだ
   からだ。更にハンガリーの物価を考えてもこの弁護士の請求額
   が非常に安い。だからこちらも言われるがままの金額をそのま
   ま払い領収書を請求しない。

   自分が外国人だから、ハンガリーに持ち込む資金が外資だから
   といって、ハンガリーから吸い取られる標的にされるとは思い
   たくない。ハンガリー人だって同じ痛い目にあっているのだか
   ら。それならば国に吸い取られないようにハンガリー人と同様
   戦闘体制に入らなければならない。

   衣食住が事足りる豊かさを目指した観点からは、一応は国造り
   に成功した日本。日本国民が同じ方向に一丸となって進み、国
   の経済基盤をつくった。かつて日本のお父さんががむしゃらに
   仕事をやっていた時、その頑張る背中を子供は見ていた。今や
   日本は、経済一辺倒による家族間や人間関係の問題や心の病を
   抱え込んだため国全体で苦しんでいる。そしてこれらの歪みを
   早く直さないと後でまわってくるつけが大きくなるために、早
   急な立て直しを計らなければいけないということも国民は理解
   している。欠点を認識することが立て直しの第一歩だ。

   ハンガリー人が一丸となって国造りをする気がないのならリー
   ダーがその指針を示すべきではないか。しかし、そのリーダー
   が、国が、目先のお金に捕らわれている。日々の生活に未だ不
   安を感じている国民から吸い取ることを先に考える。自分の保
   身しか考えない政治家の態度が現在国民に批判されている日本
   だけれど、ハンガリーのリーダーと同列に置くことはできない。
   何故ならば、ハンガリーは国造りさえ終わっていないのだから。

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   ご購読ありがとうございます。皆様のご意見・ご質問等をお待
   ちしております。学生の方にとってはそろそろ卒業旅行の時期
   ですね。ハンガリーを学生最後の旅行先に選ばれた方、昨年暮
   れよりパワーアップされた王宮のライトアップをぜひ堪能して
   ください。

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