我が愛すべきハンガリーのジレンマ

第45号   2002年1月30日

   Szagamiの思い入れの強いハンガリーのワイン。今回は2回に
   分けてワイン事情を紹介していきます。

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     生き残りか、古き良き時代の懐古に執着するか
     ワイン産業

   ブダペストから南190kmのモハーチで、寒い冬に別れを告
   げるための長い歴史のある地元の祭“ブショー・ヤーラーシュ”
   が、今年もそろそろ行われる季節。日本の生はげのようにお面
   を被ったブショー達が、中央広場を大砲の音を背後に練り歩く。
   土産用の地元産の白ワインのラベルは、生はげお面のデザイン
   が施されている。我家の棚に毎年ワイン・ボトルを並べていけ
   ば、いいコレクションになりそうだ。

   “葡萄摘みは、もう体験した?そうすれば本当のハンガリー人
   になれるよ。”我こそは真のハンガリー人であると、普段から
   お国自慢を披露してくれる友人に勧められた。“昨年モハーチ
   から近くの赤ワインで有名なヴィッラーニ村を訪れた時、ちょ
   うど農繁期だった。葡萄摘みはせず、ワインを試飲してばかり
   だったけれど。”確かに、日に焼けたハンガリー人達と一緒に
   葡萄摘みをしたら、労働の後に飲むワインの味も格別になりそ
   うだ。

   バドワイザー発祥の地であるチェコはビールが、ハンガリーは
   ワインが有名である。近年日本でもハンガリーワインが紹介さ
   れるようになったが、特筆すべきはやはりトカイ・ワインTokaj。
   ブダペストより東230kmの、スロバキアと国境を接するト
   カイ地方で生産されているため、この名前がある。フランスの
   ソーテルヌsauternesやドイツのトロッケンベーレンアウスレ
   ーゼTrockenbeerenausleseと並び、世界3大貴腐ワイン(干
   葡萄状になった糖度の高い葡萄を使ったデザート・ワイン)と
   呼ばれている。

   “王様のワイン、ワインの王様Vinum Regum Rex vinorum”
   とフランスのルイ14世に言わしめた。ハンガリー土産の王様
   でもある。黄金色に近いこの液体が、食後の甘いデザートの味
   覚を更に広げてくれる。

   スロバキアからブダペストに訪れてきた友人に、“スロバキア
   産”トカイTokayワインを頂いた。オーストリア・ハンガリー
   二重帝国が、第一次世界大戦敗北後に新しい国境を設定された
   際、トカイ地方の一部が旧チェコスロバキアに割譲された。元
   ハンガリー帝国であったトランシルバニア地方が現ルーマニア
   になってしまったのと同じである。現スロバキア・元トカイ地
   域で生産されているトカイ・ワインであった。

   ハンガリーには大きく分けると、ワイン生産地が22地区ある。
   そして残念ながら、個々に諸問題を抱えている。昨年10月1
   6日に財務省が“生産過剰”で経営困難に陥っているワイン業
   者に対し、20億フォリント(約10億円)の緊急援助を発表
   した。

   ハンガリーワインが生産過剰に陥っている大きな要因の一つに
   は、1989年の共産主義体制崩壊後、特にトカイ地方や白ワ
   インで有名なバラトン湖周辺で生産されたワインの旧ソ連への
   大量輸出が激減したことが挙げられる。国家産業の代表でもあ
   るトカイ・ワイン最大手トカイ・ケレシュケドゥーハーズTokaj 
   Kereskedohazにも、別に25億フォリント(約12.5億円)
   の援助金が出された。

   “生産過剰”ならば価格が下がるのが市場原理であるにもかか
   わらず、ここ数年におけるワイン価格の上昇はすさまじい。海
   外でも良質ワインとして通じる5つのハンガリーメーカーの価
   格動向を調べてみると、この2年で4割以上の値上がりが目に
   ついた。スーパーで購入するワインでも、毎年1−2割以上も
   値上がりしている。

   フランスでは1907年に、生産過剰によるワイン価格の下落
   で生産者による暴動が起こった。ブランディーが生まれたのは、
   17世紀に生産過剰のワインを“処分するため”に蒸留させた
   ものだ。

   しかし、現在のハンガリーワイン市場は、生産のだぶつきがあ
   るのに価格はインフレ以上に上がり、価格のお手頃感がなくな
   ってきている。そして生産者は“経営困難”を理由に政府から
   援助を受ける。それも昨年だけではない。どこかの国の庇護さ
   れた業界と同じだ。

   以前は、輸入ワインには100パーセントの関税がかけられて
   いた。零細生産者に配慮した税率が、ワイン業界全体を甘やか
   す体制となってしまった。それでもEU加盟に向けて関税率も
   徐々に低くなり、輸入ワインの国内市場を考えた新たな競争相
   手が参入し始めている。最近ブダペスト市内にも輸入ワイン専
   門店が半年で2軒も開店した。

   生産地22地区の中で、以前は良質なワインを生産していたシ
   ョプロン地方。オーストリアと国境を接するショプロンには
   元々ドイツ系住民が多く住んでいた。ハンガリーの第一次世界
   大戦の敗北が新たな国境線を設定し、ショプロン県は現在オー
   ストリアのアイゼンシュタットを中心としたブルーゲンラント
   県と接することになった。外資を導入して質の向上をしている
   ところもあるが、全体的にこの地方のワインは、低品質になり
   がちな共産時代の大量生産の影響を引きずっている。そして体
   制崩壊前後には、ワイン製造の低収益と葡萄の不作時のリスク
   を嫌い、多くのワイン生産者が商売替えをしてしまった。かつ
   て同地域・国であったブルーゲンラントのワインが未だに高く
   評価され続けているのとは対照的だ。

   両者の品質格差が広がった理由は、共産時代の計画経済に組み
   込まれてワインの質が求められなかったことと計画的大量生産、
   国際市場での競争力欠如などが考えられる。また1948年に
   は国が全国の葡萄畑を接収し、家族経営のような生産者に土地
   を小分けにしてしまったことが、後に設備投資のできない問題
   を引き起こした。(29万ヘクタールの葡萄畑を10万人に分
   配)

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   ★★★★★Szagamiのぶらぶらブダペスト散歩★★★★★★

  ●西駅近くにある中欧一大きいショッピン・センター“ウエスト
   エンド・シティー・センター”のドイツの電化製品売り場“メ
   ディア・マルクト”に、バブーシカ現る!ブダペストにですら、
   洗濯機やビデオを数あるメーカーから選択できる大型電化製品
   店なんてここ数年やっとできてきたのです。そこに、赤い民族
   衣装にくるまれた老女(彼女らにとっては普段着)が二人、立
   ち並ぶソニーのテレビの前で品定めをしていました。朝早く田
   舎から出てきて、刺しゅう入りのスカートを何重にも巻き、同
   色のスカーフをきっちりと髪の毛が隠れるように頭にまいてい
   る人達が、未だに市場や蚤の市で野菜やテーブルクロスを販売
   しているブダペスト。店内でのスパイ行為になってしまうため、
   生きた民族衣装とソニーのテレビのコントラストを店内で写真
   に撮り、皆様にご紹介することは残念ながらできません・・

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   エステルゴムとスロバキアの国境をまたぐマリア・ヴァレリア
   橋をHPでUpしました。併せてご覧ください。(今年の3月2
   2日より3カ月未満の滞在ならば、日本人はスロバキアのビザ
   が免除になります。)詳細
   
   赤ワインで有名なヴィッラーニ その1その2

   生はげ祭りが行われるモハーチ

   Szagami、日本に“ちょっと”参上することにしました。ハイ
   テク日本に対して、バブーシカだの何だの、のんびりしたこと
   を言っている場合ではないようです。

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