我が愛すべきハンガリーのジレンマ

第69号   2002年11月9日

             外国人犯罪

   今週月曜日の朝、ゆっくりと舞い始めた牡丹雪は、急に告げら
   れた冬将軍(厳冬)からの挨拶だった。ハンガリーの首都であ
   るブダペスト、この季節は観光客が減り、観光業に従事してい
   る者達はこれから春の訪れまで長く厳しい冬となる。その中に
   混じって、観光客の懐から直接“現金収入”を得る犯罪者たち
   にとっても同様の季節。冬篭りをするのか、単に被害に遭う観
   光客が少なくなるためか、その類の話は余り聞かなくなる。

   海外旅行をする上で気になるのが現地治安状況。西側諸国に“開
   国”してから13年が経ち、日本でも中・東欧圏の情報が以前
   に比べて入手しやすくなった。暗くなっても一人歩きの女性は
   多く、イタリアだったらすぐにひったくられそうなバッグを肩
   に掛ける。ブダペストに外国人が観光・居住するに当たって、
   他の欧米諸国に比べまだまだ安全な国だ。しかし正しい情報が
   日本では乏しく、旧共産国のリーダー的存在だったロシアから
   の暗いニュースが報道されるにつけ、中・東欧圏は“治安が悪
   い国”として印象付けられる。

   “ブダペストには開放的な夜がある。リスボンでは暗くなると
   タクシーや乗用車で目的地まで直行しないと、怖くて外を出歩
   けなかった。”ブダペスト生活を満喫している24歳のポルト
   ガル人の友人。

   実際に日本で取り上げられるハンガリー周辺諸国のニュースは
   経済関係が主で、身近な話題や“いいお話”よりも犯罪・事件
   の方が紙面に割かれやすい。

   1998年7月2日には犯罪組織絡みの爆破物による暗殺事件
   が、ブダペストの歩行者天国、ヴァーツィ通りのすぐ裏手で白
   昼に起こった。事件後すぐ、偶然その場を通りかかったが、日
   系企業の入る建物は、乗用車に仕掛けられた爆発物からあがっ
   た火の手で上層階までを黒く焦がし、辺りは煙と焦げ臭さに包
   まれていた。巻き添えによる被害者が数人、また爆破された乗
   用車と、原形を留めない暗殺ターゲットの遺体は後日新聞に掲
   載された。

   今年5月9日、地方都市のモールで2人組の強盗が銀行に押し
   入るや否や自動小銃を発砲、6人が即死、2人が病院で亡くな
   るハンガリー史上最悪の犯罪事件が起こった。いままで容疑者
   として何人か警察に拘束されたが、結果は全て白。メディアで
   取り上げられることも殆どなくなり、未解決のまま事件のその
   記憶だけが風化しようとしている。

   センセーショナルに書き上げれば、どこかの紛争地域か犯罪多
   発地域のように感じるが、市民生活を送る上では日本の都心部
   の盛り場に比べ、それでも安全に感じるブダペスト。

   このような派手な犯罪事件発生は極めて稀であり、犯人が逮捕
   されないと外国人による犯行だという風潮に包まれがちになる。

   1998年ブダペスト市内で会社社長が自動小銃で殺された事
   件に絡み、時のホルン首相、ブダペスト市警察庁長官が、強盗、
   殺人などの凶悪犯罪の8割は外国人によって引き起こされると
   の声明を発表した。クンツェ内務大臣は、ハンガリーでの犯罪
   発生件数の僅か3.5パーセントしか外国人はかかわっていな
   いと反論したが、凶悪で不可解な事件は外国人犯罪だとの一般
   市民感情が歴然と存在するからこそ、被疑者も特定されていな
   い段階からこんなことが話題となる。

   犯罪が発生しても犯人を特定できなかったり、また逮捕しても
   起訴されなかったりするため、わかりやすい犯罪者の統計とし
   て、刑務所、拘置所の収監数がある。それによると今年8月末
   時点で1万8千68人が刑務所に収監されており、その内外国
   人は834人。外国人犯罪者が占める割合は日本の約2.6倍
   だ。単純には比較できないが、外国人犯罪発生がずっと多いハ
   ンガリーでは、彼らが外国人を訝しげに見てしまうことも理解
   できる。ハンガリーの半分にも満たない日本での外国人犯罪発
   生率も、来日外人に限ればこの20年間で犯罪件数は約26倍
   にも増加した。そして社会不安が増幅された日本の現状は言わ
   ずもがな、ハンガリーの一般市民が外国人犯罪に敏感になって
   ゆく。

   先入観と偏見、そして経験に基づく視点で、ロシア人、中国人、
   ルーマニア人、セルビア人、アラビア系が一般的に不審人物と
   して警戒される。更に言えば、ビジネスマン、学生、研究者以
   外の外国人は、怪しい目で見られる。経済発展に魅せられて人
   が集まれば、そこより貧しい国・地域の人間も流れ込む。そし
   てハンガリーはEUという国とそれら貧しい国との間に位置する
   ため、窃盗などの単純犯罪だけでなく、中・東欧を股に掛けた
   組織犯罪やテロ組織の拠点になりやすい。そのためアメリカの
   FBIもハンガリーのロシアン・マフィアの動向にも注目してお
   り、2000年からブダペストにオフィスを構えた。

   陸続きで国家間の移動が容易で激しく人が流出入している割に
   は、移民を受け入れる素地が完成していない。高級住宅地や中
   心部では多くの外国人が居住しているが、それ以外の地区では、
   異質な者が解け込むには時間がかかる。それ故、人口比率で見
   れば僅かな外国人が一般居住地区に居を構えるだけで、外国人
   犯罪から起因する社会不安を、十分に蔓延させる。

   悪意は何もなく、普通に暮らす外国人への偏見と、不良外国人
   による犯罪の実態。上海から正式に訪洪し、働いている中国人
   の友人は、低所得者層地区に住んでいる。彼の同朋に対する悩
   みは尽きない。“合法的に住み、きちんと働いている俺達のよ
   うな中国人にとって、悪事に手を染めている3分の1くらいの
   連中は迷惑な奴らだ。彼らのせいで、近所の住人達に愛想を振
   り撒いたり、媚びなければならない。”

   近隣のヨーロッパからの人口の移動だけではなく、世界中から
   多種の民族が行き交うようになり、定住者も増加している。外
   国人労働者受け入れの議論をのんびりしている日本などとは比
   較できないほど、環境が急激に変化する。戸惑い迷走するハン
   ガリー、一般ハンガリー人が持っている外国人への不信感を薄
   めるために、犯罪を抑えながらも彼らを受け入れ続けることは、
   理想でしかないのだろうか。外国人犯罪組織と繋がりが高い車
   両窃盗犯罪が、国際的な協力を得て、この4年間で45パーセ
   ントも減少したことは、一つの明るい希望だ。

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   ペットショップに立ち寄ったところ、密輸入の犠牲者として名
   高いギリシア・リクガメが販売されていました。正規で入手し
   たかは不明ですが手のひらに乗る小さいサイズ。小15000
   フォリント(約7800円)、大17500フォリント(約9
   100円)也。

   EUの防波堤としてのハンガリー

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    ★★★★★Szagamiのぶらぶらブダペスト散歩★★★★★

  ●市内に幾つかオフィスを構える税務署APEH。そびえ立つAPEH
   のある建物が取り壊しのため、閉鎖されていました。何だかス
   カッとした気分に。超過分の税金、早く返してね。

  ●急に寒くなった今週、かなり涼しくなってもアイスを食べ続け
   るハンガリー人は多いのですが、さすがにこの冷たい風の前に
   その意思も折れたようで、熱々ワッフルの店には長い行列がで
   きていました。

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