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    ----------我が愛すべきハンガリーのジレンマ----------
            第78号 2003年3月20日
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   諸事情により長い間配信を怠っておりました。もう暫く不定期
   に配信が続くと思いますが、長い目で見守っていただけますよ
   う、これからも宜しくお願いいたします。

   さて、とうとうイラクへの攻撃が始まってしまいました。各種
   世論調査によると、ハンガリーの7割前後の国民が今回の攻撃
   に反対しております。また反戦を訴える、世界同時行動の日に
   は、約数万から10万人が集まったデモが行なわれました。そ
   の後散発的にデモがありましたが、総じて大人しい規模でした。
   Szagamiが出くわしたあるデモは、在ハンガリーイラク大使も
   出席した、ハンガリー人、アラブ人など混合で行なわれたイラ
   ク攻撃反対のデモでしたが、クルド人を巻き込んでのデモに政
   治的なきな臭さがしました。

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   ●郵便局から見たハンガリー人の労働“力”
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   そろそろ春めいてきたブダペスト、最近では目が覚める頃には
   部屋が明るくなるほど日が延びてきた。そんな朝一番に、メー
   ルを開いて目を疑った。幾度となくネット・ショッピングをし
   てきたアメリカのある会社が、私が依頼した商品の送付ができ
   ない旨をE-mailで知らせてきたのだ。ハンガリー間の取り引き
   において盗難等のトラブルが多発したため、商品送付先国リス
   トからハンガリーをはずしたとのこと。宛先に全ての国名を並
   べている多くのE-コマースの会社と違い、この会社は今までの
   実績や経験から取引対象国を絞り込んでいる。注文した商品が
   手元に届かないことは残念だが、それよりも国名リストに、政
   情不安定なコロンビア、一人当たりの国民総生産が300ドル
   未満のアフリカのチャドなどを連ねているにもかかわらず、我
   が愛するハンガリーが除外されたことに愕然としたのだ。中・
   東欧諸国で唯一リストアップされていたハンガリーだったが、
   西欧のポルトガルと共に脱落してしまった。

   ハンガリー国内の郵便事情はほかの西欧諸国と比べると、列車
   発着の正確さと共に評価されるひとつに挙げられる。自分の足
   で手紙を届けたほうが早いとイタリアでは揶揄されるが、ブダ
   ペストでは市内宛の郵便物は翌日には到着するほど迅速で正確
   だ。ハンガリーを訪れたことのある旅行者も、公共の乗り物で
   あるバスやトロリー内で、緑色の制服を着た郵便配達人を見掛
   けたことがあるかもしれない。市内を縦横無尽に張り巡らされ
   た交通網を上手に利用し、連日郵便配達を怠らない。

   日本では、既に一般の国際小包での送付を凌駕した感のあるEMS
   郵便(国際郵便サービス)。手軽さと割安な料金、スピードが
   評価され、国際郵便として多く扱われるようになった(但しハ
   ンガリーからの送付は割高)。配達時に不在の場合でも、同日
   に2度目の配達を試みる場合が多い(3回目の再配達には別料
   金がかかる)。日本からは通常3-4日かかるが、最速だと48
   時間以内で到着することもあり、DHLやFedEx等の国際宅急便も
   おちおちしていられない。

   私がハンガリーに来る数年前に耳にしていた、郵便業務に関す
   るある種の噂についての事実は、確実に減少している。国際郵
   便で送られてくる小包から、送付品が紛失するというものだ。
   9割以上の国際郵便が関税や保安の目的のために開封されるが、
   その際に目ぼしい品物が担当官の“気まぐれ”で抜き取られる
   不名誉な出来事が、以前は多発していた。特に1989年の政
   変前では、化粧品や電化製品等が国内では入手困難であり、ポ
   ケットに入れてしまおうと魔が差すには十分に魅力的な品物だ
   った。

   郵便配達人にチップを渡さないと嫌がらせをされるという悪評
   も、その慣習が薄れてきているとは言え、露骨に不機嫌な態度
   を示す配達人も依然存在している。

   ハンガリーの郵便局は、勿論、郵便業務だけで成り立っている
   訳ではない。様々な支払いに対して、銀行引き落としが一般化
   してから長い年月が経っている日本とは対照的に、公共料金を
   はじめとする振込依頼のために、殆どの市民が足繁く通う。支
   払いの優先順位を個々が決定することができ、また請求金額に
   間違いがないか確認できるので、便利ではあるが一方的に請求
   金額が徴収される銀行引き落としは、未だに馴染まない。振込
   用紙に記載された請求額に納得してから現金で郵便窓口にて支
   払う。その際に機械、若しくは手押しのスタンプで振り込み元
   郵便局の番号と日付が記され、支払い作業に問題が発生するこ
   とはないはずだ。

   しかしある友人の元に、振り込んだはずの会社から再度請求書
   が送られてきた。郵便局の窓口経由で支払った金額が、支払い
   先の会社に振り込まれていないことが発覚した。振込用紙の半
   券には支払いを証明するスタンプが押されているにもかかわら
   ず、郵便局では手続き上その友人が支払っていないことになっ
   ていた。支払い時に窓口に渡した振込用紙には“手押し”のス
   タンプが押され、現金は郵便局員のポケットへ。唯一の支払い
   証明の彼が手にしていたスタンプ入りの半券は“偽造”との、
   嫌疑がかけられる始末だった。1万フォリント(約5400円)
   の振込み額に対し、友人は自己名誉のために1万フォリント以
   上を費やし、提訴・裁判闘争をしている。

   旅先のハンガリーから日本の友達や家族に手紙・葉書を送ろう
   と、郵便窓口に行かれた方もいるかと思う。航空便かどうかを
   尋ねられ、その場で郵便局員が切手を貼っていく。一通、二通
   に対する切手添付作業には何の不思議も感じないが、企業が依
   頼する何十通もの郵便物にも、お客の前で黙々と切手を貼りつ
   づける。“効率性”を重要視する日本人には奇異に映る。きち
   んと切手が貼られて配送されるのかどうか、お客は疑惑の念を
   払うことができない。その疑念を晴らすためか、局員は預かっ
   た郵便物にすぐ切手を貼り付けていくが、後に並ぶ長蛇の列か
   らは長時間待つことへの溜息と悪態が口を吐く。

   郵便局の“負”の部分には、旧体制時代の非効率性、忠誠心の
   低さ、不誠実など、ハンガリー人の仕事に対する気持ちと態度
   が凝縮されている。ハンガリー労働者の短所である。しかし、
   正確性、迅速性といった、マイナス面を覆す可能性を含む“正”
   を同時に持ち合わせていることも窺い知ることができる。

   ここ1、2年海外からハンガリーへの投資の勢いが鈍ってきて
   いる。大きな要因として、継続的なフォリント高と、インフレ
   率以上に上昇し続ける人件費が挙げられる。EUの先輩格イタリ
   アやスペインより数段優れた、郵便業務のような“複雑な単純
   労働”における職務レベルの高さは、他の業種にも大いなる将
   来性を期待させることができると、私は信じている。しかしマ
   イナス要因以上にその労働力に魅力を感じさせることができな
   ければ、常に海外からの投資に頼っている国の将来は明るいも
   のではない。これから“正”の部分を、十分な付加価値として
   評価される材料へ仕上げていく作業に、ハンガリー人はついて
   いくことができるのだろうか

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   郵便局員は教員、看護婦と並んで“安月給職”の代名詞です。
   郵便局労働組合は30パーセントのベースアップを求め、交渉
   中ですが、郵便局側は8パーセントの提示と“普通並”の給料
   を得るには、まだまだ遠いようです。

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   ブダペストの市街地ではすっかり解け去った雪。何も今更です
   が、雪が多かった今年の冬の終わりには、凍結防止に使用する
   塩が不足する事態となり、ハイパー・マーケットでも見付ける
   ことが困難でした。

   ■雪と氷と塩と砂

   ハンガリーは1月終わりにアメリカの攻撃の正当性を支援する
   “8ヶ国声明”に名を連ね、最終的には旧ソ連圏諸国と共に総
   勢30ヶ国が、アメリカ支持にまわりました。支持国の顔ぶれ
   を見れば、何が根拠でアメリカ寄りか透けて見えます。
   (因みにその30ヶ国・Afghanistan, Albania, Australia,
   Azerbaijan, Britain, Colombia, the Czech Republic,
   Denmark, El Salvador, Eritrea, Estonia, Ethiopia, Georgia,
   Hungary, Iceland, Italy, Japan, Latvia, Lithuania,
   Macedonia, the Netherlands, Nicaragua, the Philippines,
   Poland, Romania, Slovakia, South Korea, Spain, Turkey,
   Uzbekistan)

   ■依存心をなくせ、自分の足で立て、ハンガリー人よ

   ■心地よい民主主義に浸らないで。自立するための精神的革命
    を起こす気はないか?

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    ★★★★★Szagamiのぶらぶらブダペスト散歩★★★★★

   ●バスの車内で若者が初老のお婆さんに席を譲りました。”最
   近の若い子はなかなか席なんか譲ってくれないのに、えらいね
   ぇ。”と、かばんの中から持っていたお菓子をご褒美とばかり
   に、若者にあげていました。

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