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    ----------我が愛すべきハンガリーのジレンマ----------
            第79号 2003年4月13日
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   ●広がる花粉症の被害
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   “ホーヴィラーグが終わった。とうとうイボヤが来たよ。”雪
   の花の意味を持つ小さな白い花ホーヴィラーグ(日本名マツユ
   キソウ)は、二月中旬から雪の中に混じって、土からかわいら
   しい顔を覗かせる。四月になり、春を告げる青い花イボヤ(ス
   ミレ)が到来し、家庭園芸を趣味と言うには、その知識が専門
   の域を超える50歳の友人が目を輝かせていた。ところが、ハ
   ンガリー全土で再度ちらつく雪。寒い冬の里帰りに、既に庭に
   花の球根を植え、野菜の種を蒔き始めた多くのハンガリー人達
   が、蕾が凍って全てがだめになると一斉に怒っている。四月二
   十日のイースター祭りには20度になるという天気予報に、皆
   を期待を寄せている。

   雪に覆い被さる路面のちりや細かい土が、短く力強い春の訪れ
   に解き放たれる時期になると、行き場を捜し求めて春風と共に
   舞い上がる。この悪戯な春風は、自然の息吹きだけでなく、花
   粉も運んでくる。

   日本では、猛威を振るっていた花粉の季節が終焉に向かう頃で
   あろうか。ブダペストに住み始めてから、花粉症に悩まされる
   憂鬱な日々から開放された。しかし冬を除いて、人体に何がし
   かのアレルギー反応を起こさせる花粉がハンガリーにも舞って
   いる。そのうち発症するのではないかと、危惧もしている。

   ここハンガリーでも、様々な植物の花粉がアレルギー症状を引
   き起こす人を緩やかに増加させている。その中でも特に秋口に
   一番警戒される花粉が、アンブロシア。

   花言葉は、“幸せな恋”。古代ギリシア神話では“不死”を意
   味し、神々の神殿で食されていた不老不死の食べ物を指す言葉
   として使われていた。ハンガリー語では“不毛地の草”(parlagfu
   パルラグフー)と呼ばれている。荒地や放置された土地で、ま
   たたく間に繁殖する。日本における戦後の大規模な杉等の植林
   により、花粉症の被害が増大したことと同様、アンブロシアは
   元々ハンガリーに自生していなかった。

   19世紀、交通網の発達により、以前にも増して人の行き来が
   広範囲に渡って盛んになった。新興国アメリカからの物流も増
   え、目新しいもの、優れたものが流れこんで来た。今までにな
   かった植物の種も一緒に招かざる客として紛れ込んできた。最
   初にアンブロシアの存在が記録されたのは1908年、ドナウ
   川沿いにある現ルーマニアの都市オルショヴァ。そして20年
   も経たないうちに、ドナウ川や支流のドラーヴァ川に分布を広
   げた。ハンガリー国土は3分の2が農牧地を占めるが、現在で
   はそのうちの約8割にアンブロシアを見ることができる。

   日本での花粉症疾患が全体の3から4分の1という割合と比較
   すると、現在アンブロシアが原因でアレルギー症状をうったえ
   るハンガリー人は1割強と、まだ目立たない。しかし、日本で
   花粉症が引き起こしたグッズの氾濫や社会現象の影響力を考慮
   すると、ハンガリーでもこのまま問題を放置しておくべきでは
   ないだろう。

   ハンガリー人の健康に対する関心は以前に比べて高まっている
   ものの、健康管理、予防治療という概念が非常に乏しく、高喫
   煙率、高脂肪・高塩分摂取が原因による心肝疾患とがんの発生
   率は、OECD諸国内で常にトップだ。そのために、多種のアレル
   ギーが徐々に広まっているのにもかかわらず、くしゃみ・鼻詰
   まり、目や皮膚のかゆみなどの風邪と酷使する症状と混同し、
   自分がアレルギー体質だということにすら気が付かない者もい
   る。

   また都市での排ガスや、西側食文化の急激な流入による変化が、
   花粉症に反応しやすい体質をつくることを助長している。“地
   元に住んでいたときは何もなかったのに、ブダペストに住み始
   めてから鼻がぐずるようになった。”とは、唯一アンブロシア
   の影響が殆どないと言われている、北東部エゲル出身の26歳
   の男性。

   人は木々や植物の花粉と共に、長らく過ごしてきたはずだ。し
   かし、花粉を犯人としたアレルギーが近年急増している。地方
   よりも都市部での疾患が多いことを併せて考えると、奇妙にも
   経済発展のカーブと符合する。アレルギー反応を起こす花粉だ
   けが原因でないことは、空調設備や道路舗装の完備、添加物を
   摂取する生活が増えるなどの複合的要因が重なって、花粉症疾
   患が増えた日本の事情を思い起こせば同様のことである。

   ハンガリーでは一昨年の秋、アンブロシアを枯らせる病気がヨ
   ーロッパで始めて記録され、その年の花粉症の被害が少なかっ
   た。なぜ急にこの病気が流行ったかはまだ明らかになっていな
   いが、既にこの病気を利用してアンブロシア駆除の研究が始ま
   っている。しかし、新しい“疾病”を新しい方法で対処する開
   発に時間や資金を費やすよりも、その疾病が起こった背景を探
   求する方が、長い目で見た問題解決への一番の近道ではないだ
   ろうか。

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   昨日、EU加盟の是非を問う国民投票が行われました。昨年行わ
   れた地方選挙並みの投票率で、45.62パーセント。結果は
   加盟賛成が83.76パーセントと、大方の予想通り圧倒的で
   した。因みに先月に行われたマルタ、スロベニアでの同様の国
   民投票では、マルタの加盟参加:53.65パーセント、スロベ
   ニア:89.61パーセントとなっています。

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   健康への関心の低さにはときに驚くことがあります。“健康ば
   か”になる必要はありませんが、もう少し自分の身体を大事に
   してもらいたいものです。

   ■健康問題の原因は煙にまかれてしまうのか

   ■命の値段

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    ★★★★★Szagamiのぶらぶらブダペスト散歩★★★★★

   ●観光シーズンが始まる春、博物館の入場料などがいっせいに
   値上がりする季節でもあります。近所のセルビア正教会では1
   00フォリントから一気に200フォリントへ。さすがにやり
   過ぎたとばかりに翌日は150フォリントに収まっていました。

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