━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ----------我が愛すべきハンガリーのジレンマ----------
          第85号 2003年10月28日
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   長い間、休みをいただいておりましたが、当メールマガジンを
   解除せず辛抱強くお待ちいただいた読者の方々、また励ましの
   お便りを下さった読者の方々にお礼申し上げます。初期の頃の
   ような発行ペースは難しくなりましたが、少しずつ皆様に観光
   の視点から見えないハンガリーをご紹介し続けていきたいと思
   いますので、これからもご贔屓のほど宜しくお願いいたします。

   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   ●安全な歩道ができるのは夢か?
   ........................................................

   しばらくメルマガの配信を怠っているうちに、季節は夏から冬
   へと駆け抜けてしまった。暑さで死者が多数出るほど厳しかっ
   たヨーロッパ各地の夏がうそのように、まだ10月を数日残し
   ている現在、ブダペスト郊外からやって来た自動車のボンネッ
   トの雪を見て、少々早めの冬の到来を窺い知ることができた。
   頬をなでるような風でも身に堪える。路面凍結や積雪に細心の
   注意を払う季節が近付いてきた。

   突風に薄手のコートでは肌寒い10月上旬、足繁く通う歩道で、
   頭から流れている血をタオルで拭いている男性を見掛けた。折
   からの強風に煽られ、通り頭上の開け放たれていた窓のガラス
   が外れて彼に直撃したのだった。歩道に飛び散った血しぶきが
   生々しい。

   真冬になって小雪がちらつき始め、ゆっくりとその雪がとけれ
   ば、建物のひさしからたれる氷柱が凶器となる。歩道によって
   は“氷柱に注意”の立て札が、ロープと共に仕切られる。歩行
   者は自動車に注意しながら車道へ迂回しなければならない。

   ヨーロッパ諸国では都市開発が計画的に行われてきたために建
   物の無秩序な建設は無く、見た目には非常に美しい。しかし自
   動車の無い時代の設計・建築されたため、人々の主要な交通機
   関が自動車である現在では、車と歩行者が十分なスペースを共
   有することは不可能である。19世紀後半のブダペストでの建
   築ラッシュ時に、現在のモータリゼイションが考慮されるはず
   が無かったのは当然だ。当時の人口増加に対応すべく、5階以
   上の高層建築物が外壁の装飾と共に多く建てられた。

   都市部のほぼ全域に渡って車道とは別に一段高く歩道が併設さ
   れているため、道は狭く、一方通行道路が多い。社会主義時代
   には減価償却の概念が無いので修復が殆どされず、外壁のモル
   タルがはがれて豪奢な建物の装飾はもろくなり、歩行者の安全
   を妨げるようになった。数年前には荒廃著しい8番地区でもろ
   くなった建物の一部が自然落下し、歩行者が亡くなった。細か
   い修復を怠ってきたつけと、修復費を出せない生活レベルの住
   人に占められた建物が密集する地区では、頭上の危険度は増す
   ばかりである。

   50年以上前に建てられた住宅はハンガリー全土の4分の1の
   世帯に当たり、また半数以上の世帯は築30年以上の建物に住
   んでいる。まして歴史的建築物の割合が多いブダペストでは、
   修復が早急に求められる建物にかかる費用は天文学的な金額で
   あり、市や国の経済的後押しがあるとは言え、冬の暖房費の支
   払いすら頭を抱える住人にとっては、“修繕費”の支出など二
   の次になる。

   歩行者を脅かすのは頭上からだけではない。歩道に乗り上げて
   駐車する自動車の列である。1993年からブダペスト市内中
   心部では、路上駐車できる道路を指定して駐車料金を徴収する
   ようになった。一般の高層住宅では駐車場が敷設されていない
   ので、それまでは自宅周辺に路上駐車するのが普通だった。し
   かしハンガリー経済の右肩上がりの状態が長く続き、小金持ち
   になった世帯が、ブダペストを離れて郊外に一軒家を構えるよ
   うになると、通勤のために自動車保有率が急激に上がってきた。
   ブダペスト市が駐車料金の徴収を委託している会社によると、
   一車両あたりの道路面積は1965年から30年で7分の1に
   減少し、市内での駐車収容率は既に130パーセント以上にな
   ってしまった。そのためマナーを逸脱した路上駐車が目立ち、
   交差点の歩道部分を塞いだり、歩道に乗り上げすぎて、車椅子
   の人はおろか歩行者すら通れないほどの狭い“歩道”が目立つ
   ようになった。更に常習的に違法駐車をするために、偽の障害
   者カード(場所によっては障害者カードがあれば合法的に駐車
   できる)の氾濫や、駐車を管理している民間業者(違反者に罰
   金を請求できる)との癒着が問題となっている。

   土曜日の午後から日曜日は駐車料金が無料になる。街を行き交
   う自動車がめっきりと減り、平日は入る隙間も無いほどにぎっ
   しりと詰まった駐車車両の列にもすきっ歯が目立ち、市外から
   の流入車両が如何に多いかを物語っている。

   渋滞と駐車の問題は都市が抱える当然の宿命と言えばそれまで
   だ。しかし実稼動1割ほどで、それ以外はただの箱として歩道
   を長時間占領し、また建物の手入れの不行き届きから落下物の
   危険性にさらされる歩道を、永久的に無視しつづけることが出
   来るのだろうか?建物の一部に落下の危険性があると言うこと
   で、大通りの交通を規制してはしご車が登場することも珍しい
   光景ではない。

   100年以上前の建物を綺麗に維持しながら、現代社会の物質
   世界を謳歌し続けることは容易ではない。既に手遅れ感のある
   先進ヨーロッパ諸国の大都市の街づくりの轍を、ブダペストが
   踏む必要はない。蓄積された失敗の先例を見ながら安全な歩道
   を確保、つくり出すことが重要である。しかし一般市民にはバ
   リアフリーの意識がまだまだ希薄だ。市や国が先だって“箱も
   の”をつくらなければ、解決しそうにもない問題である。

   さて、注意しなければならないのは頭上や自動車だけではない。
   散歩しているブダペストの犬達は毛並みもしつけも素晴らしい
   のだが、路上の落し物もそれは立派なもの。私自身、歩きやす
   い街ができていくと同時に、飼い主の美意識の向上も期待して
   いる。

   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   歳をとると都市部での生活の方が病院、買い物へ行くなど便利
   な点が多いと言われますが、ハンガリーでの都市生活は共産主
   義時代の矛盾で身動きの取れない人達もいます。

   ■共産時代の借金を背負うには荷が重過ぎる
    年金だけでは生活が苦しい高齢者

   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

      ★★★★★Szagamiのぶらぶら散歩★★★★★

   ●ある総合病院内の看護婦がこそこそ話:“今日は何だか急患
   が多いわね。あと1時間ぐらいしたらヘリコプターで200k
   m先からまた患者が運ばれてくるそうよ。”

   続・看護婦のこそこそ話:“英雄広場に着陸して、そこから救
   急車で運ぶんですって。”007の撮影隊がブダペストにやっ
   てきたよう。でも患者さんは無事だったのでしょうか?

   ●中央市場の地下のアジアン・ショップで、外国人らしき買い
   物客がハンガリー人店主に“塩の入っていない醤油がほしい!”
   とご注文。つい横から口を挟みたくなった瞬間でした。そので
   っぷりとした腹がグルメを物語っている店主、“そういう商品
   はないと思いますよ。”と普通の醤油を紹介していました。

   ●Szagamiの住む建物のエレベーターで、住人の来客と思われ
   る中年の男性と乗り合わせました。“日本人ですか?私の親戚
   に日本人と結婚したのがいます。”と話し始めるやマシンガン
   のように日本を褒め称え始めました。ついには以前盛り上がっ
   た“ミツコ”の話題へ。“ハンガリー政府はばかだ。折角日本
   の天皇がブダペストへいらしたというのに、日本人をばかにし
   た番組をつくるなんて。我が国の恥だ。”おじさん、かなりの
   日本贔屓。

   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ご意見ご感想などはhungary@szagami.comまで 
All right reserved Copyright Szagami 1999-2005
http://www.szagami.com