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    ----------我が愛すべきハンガリーのジレンマ----------
            第86号 2003年11月09日
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   ●中国からの甘い汁と副産物
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   市の中心部の中央市場からトロリーバス一本で行ける中国市場
   “四虎市場”。自動車が一台ほど通れる幅の門が4つあり、敷
   地は細長く巨大だ。市場内部の狭い路地には洋服や靴、雑貨な
   どを扱う店が混沌とひしめき合っている。ヨーロッパでは最大
   規模で地元ブダペストでは単に中国市場と言われているが、入
   口の看板にはベトナム語も併記されている。周辺の店にはロシ
   ア語、ポーランド語、ルーマニア語が書かれた看板が掲げられ、
   それらの言葉が飛び交っている。旧共産圏諸国の人と物の流れ
   を伺える。

   今でこそ形ばかりとなってしまったが、市場の入口には金属探
   知機のゲート、その後は手荷物検査。入口の看板にはビデオと
   カメラとピストルの絵に赤字でバツが描かれている。

   この市場の存在は近隣諸国まで広く伝わっており、行商人がや
   って来ては大量に製品を購入し、大きな袋やバッグに詰め込み
   自国で売りさばく。個人客で賑わう市場と言うよりは卸市場の
   色が強く、店舗を構える中国人以外にも、闇両替を持ちかけて
   くるシリア人やトルコ人、盗品と思われる携帯電話をビュッフ
   ェのテーブルに並べる国籍不明のゲリラ商人が存在している。
   また中国人と言っても出身地は様々で、北は黒龍江省のハルピ
   ンから南は福建省・広東省まで、広東語、客家語なども多く聞
   かれ、訛っていない北京語は皆無だ。ベトナム人やハンガリー
   人も店を構え、店員も客も良く言えば国際色豊かだが、実際は
   怪しい無国籍地帯の雰囲気が漂っている。フォリント札を片手
   に賭けトランプに夢中の中国人男達の一群を見ると、ここがハ
   ンガリーとは思えなくなってくる。

   今年8月にハンガリーのメジェッシ首相、コヴァーチ外相を筆
   頭とした外交団が中国を正式訪問した。オルバーン前首相は中
   国での人権問題を意識して訪問を長期間延期してきたため、ハ
   ンガリー首相が中国を訪れるのは実に44年ぶりのことであっ
   た。28日には胡錦涛国家主席と会談し、チベット、台湾問題
   への理解と内政不干渉の確認の元、経済事項を中心とした9つ
   の二カ国間協定に署名した。

   ハンガリーと中国との経済交流は年々増大し、EU加盟を目前と
   したハンガリーは、中国にとって西側へ商品を売り込む中心地
   として注目されている。中国のハンガリーへの投資は1億2千
   万ドルに上る。しかし、13億9600万ドルの対中国貿易赤
   字を抱えており、今年9月までの貿易赤字は、既に昨年を大き
   く上回っている。

   貿易不均衡を是正する処置として、中国人観光客を誘致するた
   めにプロモート費用4千万フォリント(約2千万円)の予算を
   組み、政府は査証発行の緩和を期待するが、焼け石に水だ。ハ
   ンガリー政府はアヒルやガチョウの輸出促進を協定に滑り込ま
   せたが、これもお題目のひとつに過ぎない。

   テレビのニュースで映し出された、未来に期待を抱かせる映像。
   首相が先頭を切って中国を訪問し、経済や人、スポーツの交流
   を後押しする華やかな協定。しかしハンガリーで言う実際の“中
   国人ビジネスマン”とは、税金を殆ど払うことなく現金のみの
   やり取りを行い、闇両替にてマネーロンダリングを行うような、
   中国市場で見かける怪しい輩達が大多数だ。

   この協定の項目には中国人犯罪の対応への協力も盛り込まれて
   おり、既に9月には北京公安局から中国人犯罪の捜査協力のた
   め、捜査員がブダペストに派遣された。昨年、一昨年と中国人
   が絡む殺人事件は発生しなかったが、毎年殺人事件などの凶悪
   犯罪は起こっていた。今年も3人の中国人が殺されている。ハ
   ンガリー警察によると、昨年逮捕された外国人犯罪者4452
   人のうち中国人は123人、組織的な犯罪集団はまだないと推
   測され、一般市民の安全を脅かすような存在ではないと位置づ
   けされている。それは同胞を誘拐して身代金を要求することに
   特化してきたからだ。

   悪名高い蛇頭が行うような犯罪も存在し、手引きをされた密入
   国者・不法滞在者が犯す犯罪も目立つ。ハンガリーに在住する
   中国人が1〜2万人と幅があるのは、“推定”でしか統計が挙
   げられないからだ。就労許可証が発行された中国人労働者は、
   昨年僅かに2054人だけである。(複数年の許可証や永住許
   可のある者もいるので実数は多いが)

   90年代後半までは共産主義諸国のよしみで入国審査がゆるく、
   西側諸国へのゲートとしてハンガリーに中国人が大挙し、その
   結果犯罪が増え続けた。個人的に憶えているだけでも2件の爆
   破事件があった。その内一件は英雄広場近くの中国レストラン
   では2人が死亡、またマネーロンダリングに絡む金額もシリア
   人に次いで多い。

   ハンガリー警察の中国人犯罪に関する発表は穏やかだ。しかし
   北京公安局から捜査官が派遣されたのは、将来起こりうる中国
   人犯罪を杞憂しているからだ。政府・警察の表立った対応の反
   面、中国人に対する一般市民感情は手厳しい。中国人に間違わ
   れ、からかわれたり暴力を振るわれたり、また窓口や店先で不
   公平な対応をされたりと不快な思いをした在洪邦人、邦人旅行
   者の話は後を絶たず、外見が似ている東洋系として複雑な感情
   に駆られる。日本で中国人犯罪が急増して社会不安が高まって
   きているように、ハンガリーにおいても彼ら独自の閉鎖社会や、
   犯罪の温床となる市場を形成し、生活習慣が余りにも違いすぎ
   る隣人に、ハンガリー市民の見下した目と畏怖の念が向けられ
   ているのは、悲しい事実である。

   町の“一番店”を出すことに、中国人同士が競いあう。商売に
   なりうる人口が町にあれば、何処にでも中華料理店や洋服・靴
   店を開店する。一般市民は格安な衣料品、食事の恩恵を受けつ
   つも、嫉妬の心を抱き、彼らが不法行為を犯すか心配している。
   政府レベルでも、経済・犯罪流入のワンセットを上手にハンド
   リングするのは容易なことではない。増してや日々の生活に追
   われている一般の人達は、流れに任せて彼らと共存していかな
   ければならない。爆発的に広がる中国からの商機の甘い汁だけ
   で吸うわけにはいかない。必ず痛みを伴う副産物が付いてくる。

   日本では市民不安が広がり、この夏、唐家セン国務委員と自民
   党員との会談で、中国公安局の捜査員を東京の中国大使館近く
   に常駐させることになった。また経済的つながりが中国ほどで
   なかったイランに対しては、強行した不良イラン人の排斥はあ
   る程度成功を収めた。

   しかし日系企業が多く点在する中国には同様の手段が使えず、
   手をこまねいている間にも過激な思想だけが一人歩きし始めて
   いる。日本は中国と地勢的に近く、過去の禍根があるものの経
   済的関わりを切ることができない。ハンガリー外交団の動きは、
   日中間のこれからの付き合い方のヒントになるような気がする。

   中国投資を増やすため、また中国人ビジネスマンが安心して滞
   在できるよう、彼らの子弟のための学校の建物を政府が寄付す
   ると言及し、高速道路建設の入札に中国企業を加えるなど大盤
   振る舞いをしたメジェッシ首相。中国に次いでハンガリーとの
   貿易額が多く、品行方正な日本の子弟のためにも、同様とは言
   わないまでもある程度の配慮をお願いしたいものだ。

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   ●その中国市場の入口の写真

   上に数字を挙げたように、外国人による犯罪は中国人が一番多
   いわけではありません。近隣諸国、ロシア・マフィアなども暗
   躍しています。

   ■外国人犯罪

   憶測ですが、共産主義時代からはびこっていた賄賂の受け渡し、
   ネポティズム(縁故主義)が、中国人にとって“勝手知ったる”
   物だったので、上手にハンガリーでの経済活動を謳歌している
   のでは?

   ■外国人のとる態度や行動は
    彼らの住んでいる国の風土や習慣の鏡である

   ●日本のガイドブックには載っていない“ドゥナ・ドラーヴァ
   国立公園”をWeb上でupしましたで、ぜひご覧ください。

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      ★★★★★Szagamiのぶらぶら散歩★★★★★

   ●黄色い地下鉄メトロ1のデアーク駅で、普通のおばあちゃん
   が運転手さんに何かクレームをつけていました。親切な運転手
   さんは運転席のドアを開けて応答していましたが、路上で公共
   バスに文句を言うのとは違うのですよ、おばあちゃん。地下鉄、
   出発が一分ほど遅延。

   ●久しぶりに聖イシュトヴァーン大聖堂までお散歩に出向きま
   したが、長らく行われていた大聖堂前の地下駐車場の工事が終
   わっていて、すっきりと綺麗になっていました。でも、大聖堂
   内天蓋部分の電灯はなく、絵画が暗くて良く見えませんでした。
   観光客の方々のために内部もライトアップして頂きたいですね。

   ●市場敷地外の路上で中国野菜を販売していた中国人男性。ハ
   ンガリーではなかなかお目にかかれない立派な青梗菜にみとれ
   てしまいました。彼に雲南省出身?と訊かれたので、“日本人”
   と答えると、“日本人って何語を喋るの?”思わずずっこけて
   しまいました。

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