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    ----------我が愛すべきハンガリーのジレンマ----------
            第87号 2003年12月25日
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   年の瀬がいよいよ迫ってまいりましたが、皆様はどの様な一年
   をお過ごしになりましたでしょうか?当“ジレンマ”、今年は
   かなり不定期な発行となり、このメルマガを含めて僅かに13
   号しか書くことができませんでした(月刊のようです・・)。
   来年は少し体制を変えて、皆様に忘れられない程度に発行頻度
   をもどしたいものです。さて、当メルマガを通じて何度かお便
   りのやり取りをさせていただいた読者の方々に、メールで年賀
   状を差し上げておりましたが、今年は身内に不幸がありました
   ので、新年のご挨拶を失礼させていただきます。それでは皆様
   におきましては、良いお年を迎えられますように。

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   ●本気か見掛け倒しか?観光推進戦略
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   クリスマスを前後して、ここ数日のブダペストの北風は頬を突
   き刺すようだが、ツリーを彩る降雪には恵まれなかった。日本
   の大晦日にあたるクリスマス・イブ、最後の営業を粘る商店も
   例年どおりに午前中若しくは2時までに店じまいをする。近年
   では観光客目当てに店を開ける土産屋やレストランが徐々に増
   えてきたが、それでも運悪くイブやクリスマス当日の仕事のシ
   フトに当たり、機嫌の悪さをお客に押し付ける従業員を尻目に、
   殆どの人が家族団欒の帰途に着く。

   夜更け前の紺碧色の空の下、公共の乗り物の便は間引き運転と
   なり、日頃は賑わう通りも人通りがまばらになる。観光ルート
   をそぞろ歩くのは、クリスマス休暇を異国の地で祝おうとする
   外国からの観光客。地元民が極端に少なくなると、目に見える
   観光客の“実数”を肌で感じ取ることができる。

   昨年ハンガリーを訪れた外国人は3千万人を超えた。今年10
   月までの総数も前年とほぼ同数で推移しており、昨年日本を訪
   れた外国人数の577万1975人と比較すると、観光立国を
   アピールするには十分な来訪数である。陸続きで移動が比較的
   容易なハンガリーと日本を一様には比べられないが、人口僅か
   1千万人の国に多くの外国人が訪れているか、数字だけを見る
   と魅力的な市場だ。

   しかしここ数年、ホテル稼働率の低迷や土産物屋での売り上げ
   減少は、留まるところを知らない。数年前には羽振りの良かっ
   た観光ガイド達や旅行会社の営業マンは、年々状況が悪くなる
   一方だと愚痴をこぼしてばかりだ。そしてその根源を、政府は
   乱暴にも911事件の発生だけに求めている。

   来洪外国人3千万人という机上の数字は、宿泊が伴う“観光”
   や“ビジネス”が目的の、魅力的な来訪者には直結しない。周
   辺諸国にいる多くのハンガリー人系を外国人という計算に入れ
   る事情や、物価の格差が著しいオーストリアが隣国に位置する
   ことを考慮すると、この旨味の割合はぐっと減ってしまう。

   今年1−10月までの外国人の宿泊数は891万9千泊、ブダ
   ペストは順調にその数を増やしているのにも関わらず、全体で
   は前年同時期より6パーセント強も落ち込んだのは何故だろう。

   ハンガリー観光業のドル箱であるバラトン湖での宿泊数減少は、
   15パーセント近い。国全体で、宿泊数のおよそ4割を占める
   上客のドイツ人の足も遠のいている。私がひいきにしている赤
   ワイン村、ヴィッラーニが位置する南トランスダヌビア地方の
   落ち込みは、2割以上にもおよぶ。ワイン・セラーで赤ワイン
   を試飲しながら、大幅に落ちた数字にがっかりする。

   情報、人の流れがブダペストへ一極集中して流入している国の
   構造を見ると、観光業も同様に首都圏と地方の貧富の格差が、
   更に広がりつつあることを感じる。

   果たしてハンガリーの地方には、目の肥えた、また来洪をリピ
   ートする観光客を満足させる観光資源はないのだろうか?否、
   トルコとの戦いで城の殆どが瓦礫化してしまったものの、格調
   高い旧貴族の屋敷は今尚数多く残っている。数百の温泉があり、
   良質のワインと共にゲストハウスで楽しめたりと、ゆっくりと
   くつろぐ場所には事欠かない。地方に残る人々の素朴さや、ブ
   ダペストでは消えつつある昔ながらの郷土料理を、手頃な値段
   で大いに楽しめる。

   EU加盟を間近にして、観光大国の大先輩フランスやイタリア
   を意識している。しかしサービスや施設の質と“価格”におい
   て肩を並べようとすれば、共産主義的な習慣が抜けきらないハ
   ンガリーの敗北は明らかだ。ハンガリーへの観光の大きな魅力
   のひとつは、楽しみの質に対する優れた“コストパフォーマン
   ス”だった。ところが観光産業関係のインフレを大幅に上回る
   近年の価格上昇に、ドイツ等近隣諸国からの観光客が割安感を
   感じなくなってしまった。“歩き方”などのガイドブック等、
   入場料や運賃などの値上げの表記にはいつも追いつけない。滞
   在の高コストが、割安感を求める観光客の候補地としての順序
   を下げ、滞在日数を減らしている。更に来年からは、宿泊料金
   とレストラン等の付加価値税の値上げが予定されている。“割
   安感”を外国人旅行者から奪う要因となり、観光時の財布の紐
   が硬くなることが容易に想像できる。

   この夏ある国会議員は、国による遅々として進まない観光推進
   計画とバラトン湖関連の補助金削減に危機感を募らせ、政府を
   批判した。それに対してメッジェシ首相は、国の8割の地域に
   治療用温泉があることをアピールし、巨額な援助金を投じて観
   光客を誘致することを目的とした“健康ツーリズム”計画の来
   年からの開始を強調する。温泉地でのレジャー化で観光誘致を
   最重要視する戦略が始まるが、カルロヴィ・ヴァリなど国際的
   な知名度を持つチェコの都市と競うことになる。

   首相はまたワイン蔵が連なり温泉が有名なエゲルを訪れた際に、
   この街が観光業の拠点となりうると持ち上げ、地域復興も観光
   業で盛り立てられると発言した。しかし100−150億フォ
   リント(約53−70億円)程度の政府援助では心もとない。

   政府からの補助金がどの様に活かされるか詳細はわからないが、
   手始めに観光客のニーズに合わせた的確な案内と、パンフレッ
   トなどの徹底した普及に力を注げないだろうか。街や道、建築
   物を修復するインフラ整備などのハード面の強化と同時にソフ
   ト面の強化を行うには、莫大な資金とエネルギーが必要ではあ
   るが、今こそが正念場である。排ガスにまみれ、手入れの行き
   届かないブダペスト市内の荘厳な建築物。今ひとつ垢抜けず、
   もどかしさが残る少々鈍臭いハンガリーに愛着を覚え、リピー
   トする日本のハンガリーファンも多いのだから。

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   本文で海外からのハンガリーへの観光事情をご案内しましたが、
   逆にハンガリーから海外への旅行者数が順調に伸びている中、
   団体旅行で日本を訪れたハンガリー人は9月末までにたったの
   110人。日本はまだまだ物価が高くて遠い国のようです。因
   みにハンガリーを訪れた日本人は9月末まで6万6千人(うち
   ツアー客16462人)、人口比を考えても・・

   ●物見遊山の観光だけでなく、その土地に住む人達の文化に触
   れることも楽しいものです。巨大スポンサーのお世話にならず、
   昔ながらの祭りができたのは、皮肉なことに共産時代でした。

   ■スポンサーが暗躍、祭のイベント化

   ●先日、30年程前の各地の村での祭についての本を購入しま
   した。民族衣装を着た、ごく普通の日常がそこには残っていま
   す。

   ■世界遺産という看板を維持するために
    真の文化の心が消滅する

   ●ホルトバージ“ドゥナ・ドラーヴァ国立公園”をWeb上で
   upしましたで、ぜひご覧ください。

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   寒さも厳しくなって観光オフシーズン真っ盛りのブダペスト、
   タイミングが悪いのですが、ハンガリー人ともっとつっこんだ
   コミュニケーションを可能にする、もっとハンガリーを知るこ
   とができる会話集を11月に、“旅の指さし会話帳・ハンガリ
   ー”として発行しました。海外旅行情報誌“エイビーロード”
   の表紙を飾る、イラストレーターの北島志織さんによるお茶目
   なイラストが、ハンガリー人とのコミュニケーションをスムー
   ズにさせてくれます。外国語の会話集の革命児である“指さし
   シリーズ”からの出版ですので、軽い読み物としても楽しめま
   す。もしご興味がおありでしたら、実用書のひとつとして加え
   ていただきたいと思います。また全国の書店で販売されている
   はずですが、見当たらない場合は此方のアドレスからでもご購
   入いただけますので、ご参照ください。

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      ★★★★★Szagamiのぶらぶら散歩★★★★★

   ●最近急に冷え込み、日中でも氷点下の気温ですが、野鳥達は
   元気いっぱい。凍った水たまりに降り立ったリゴー(ツグミ)、
   水が飲めなくてがっくりするかと見守っていたのですが、氷の
   かけらをついばんでのどを潤していました。そのたくましさに
   は拍手ですが、見ているこちらの方が凍えそうでした。

   ●毛足の長いハンガリー固有種の豚“マンガリツァ”を飼うと、
   養豚業者は補助金をもらえるそうです。そのマンガリツァのサ
   ラミをスーパーマーケットで発見。上質な油とライトな食感に
   一口で大ファンになったSzagamiですが、翌日には既に在庫は
   完売。残念無念・・あの高級感たっぷりの味は、マンガリツァ
   ならでは?それとも単に作り方が丁寧だったためため?未だに
   この謎は解けません。

   ●昨年に引き続き、国会議事堂前にミニ・スケートリンクが設
   置されました。多くの親子連れが自分のスケート靴を履いて滑
   っていました。ベスト・ショットをと思い普通の靴で氷の上を
   歩いた瞬間に、ゴム靴では氷上に乗らないようにとの放送が。
   別にSzagamiだけではありませんでしたが・・

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