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    ----------我が愛すべきハンガリーのジレンマ----------
            第88号 2004年2月20日
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   皆様、ご無沙汰しております。気が付いてみれば、今年初めて
   のメルマガ発行ですね・・Szagamiは1月中旬から約1ヶ月程
   日本に滞在して、先日ブダペストに戻ってきました。日本に向
   かう飛行機の中で書いた本メルマガすら発行できずに、忙しさ
   にかまけてしまいました。今は鳥インフルエンザの話題で霞み
   がちになってしまった狂牛病関係のお話をご紹介します。

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   ●狂牛病騒ぎで復活か?
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   ハンガリー名物料理の代名詞グヤーシュ・スープは、牛肉をふ
   んだんに使ってこそあのコクがでる。ところがハンガリーらし
   さを求める訪洪中の方々に自信を持って勧めると、最近では“狂
   牛病問題があるから、牛肉を極力避けている。” との歯切れ
   の悪い返答ばかり。ヨーロッパ各地で相次ぐ狂牛病の発生に及
   び腰になる旅行者を安心させるため、団体旅行で出す食事のメ
   ニューから牛肉を排除する旅行会社が多くなった。幸運にも狂
   牛病の発生がまだ確認されていないハンガリーでも、“豚肉”
   や“鶏肉”の奇妙なグヤーシュが用意されている。

   昨年12月にアメリカで初めての狂牛病が確認され、最大の輸
   出国の日本で禁輸措置が取られたと同様に、ハンガリーでも海
   外からの輸入が禁止された。昨年末の農業省の発表によると、
   ここ最低1年はアメリカからの牛肉の輸入登録はコンピュータ
   ー上存在しないということになっている。しかしヨーロッパは
   陸続きのため、狂牛病汚染国からの牛肉が国をまたいで国境を
   潜り抜けてくるのは簡単だ。

   90年代に入って狂牛病は目立った問題となり、ハンガリー人
   の食卓からは牛肉が遠ざけられるようになった。一人当りの年
   間牛肉消費量が1970年は10.2kg、85年は8.7kg、
   そして2001年には実に消費は3.9kgと、着実に落ち込ん
   でいる。(日本は6.3kg)

   勿論、緩やかな牛肉の消費衰退は狂牛病騒ぎのみが原因ではな
   い。近年若年層に見られる食事の“ライト志向”はフランスや
   イタリアだけに見られる傾向ではないし、一般の販売形態にも
   多くの問題が起因する。例えば最上部位のヒレ肉は一切れ単位
   として売られることはなく、2−5kg以上の塊でなければ購入
   することは難しい。百グラム単位の購入を求める顧客の懇願と
   もとれる態度に、あてつけの溜息を吐き出す店員は多い。

   今年5月に加盟予定のEUにおいて、農畜産物の牛肉の割り当
   て生産高は低く押えられている。政府からの援助金についても、
   他の農作物同様に作付面積で産出され、放牧面積は農作地に比
   べて“部詰まり”がよいために低く抑えられてしまう。更に牛
   肉の生産量が10年に満たない間に半減しているので、牧畜業
   はまったく元気がない。

   この狂牛病騒ぎの中、にわかにスポットライトを浴びるように
   なったのがハンガリー固有種の牛、灰色牛“スルケ・マルハ”
   だ。この牛は長いホーン状の角を持ち、ハンガリー大平原“プ
   スタ”の街、ホルトバージ等で放牧されている。

   灰色牛は8世紀頃から他の種類の牛と掛け合わされることがな
   く、19世紀終盤には130万頭が飼育されるほどハンガリー
   では主要な牛であった。産業革命と共に19世紀半ばから徐々
   に“効率性”が重要視され、成長の遅い灰色牛は他の種類の牛
   にその地位を譲らざるを得なくなった。20世紀半ば以降は忘
   れられた存在となるスルケ・マルハ、1975年には僅か30
   0頭にまで激減する。政府が灰色牛を飼う畜産業者に補助金を
   払うことでその数は少しずつ増え、現在は3千頭余り、絶滅だ
   けは逃れることができた。

   灰色牛は食用としてだけではなく牛車を引いたりと、昔ながら
   の牧童達には非常に重宝されてきた。安全な牛肉が求められて
   いる今、灰色牛の特異性が注目されている。千年以上も他種と
   交配されず、狂牛病の原因の一つとして疑われている“肉骨粉”
   などの人工飼料をまったく使わずに育てられてきたため、交配
   が続いた家畜の持つ虚弱性がまったくない。まだ研究段階で立
   証されているわけではないが、一部の専門家の間では狂牛病に
   対して免疫性があると信じられている。

   国立灰色牛協会のボド・イムレ教授は、灰色牛の狂牛病の免疫
   性を今の段階で否定はしているが、その可能性を完全に排除し
   ているわけではない。しかし現存する灰色牛の頭数では、求め
   られる市場を満たすことはできないとして、多大な希望を負わ
   せるのには否定的だ。

   “効率性”ばかりを追いかけ間違った循環社会を求めたばかり
   に、1920年代に“畜生食い”をさせる肉骨粉が生じた。食
   品に付帯してしまった取り返しのつかない恐怖。延々と広がる
   プスタで灰色牛がのんびりと草を食む情景は、今では観光地の
   情景の一部分だけの存在となった。その牛が今になって注目さ
   れるとは、人間の愚かさを感じざるを得ない。

   将来牛肉を食す恩恵を失うことになっても、文化的財産(また
   は文化的遺)として灰色牛“スルケ・マルハ”がのどかに横た
   わる大平原プスタを失わせてはならない。

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   日本での牛丼販売中止のニュースを目にしすぎて、食傷気味に
   なってしまいました。新聞もテレビも大スポンサー様に気を使
   っているのか、ハンバーガー関連の話題を逸らしているように
   感じました。でもアメリカからの牛肉輸入禁止で、食料自給率
   の低さがクローズアップされましたが、コンビニ等からの無駄
   な“廃棄”を少なくすれば、自ずと自給率も上がるのでは?

   ●日本やアメリカを始め、飽食の国へ送られる食材の原産国の
   現状は、なかなか厳しいものがあります。

   ■生活の基本の“食”も植民地化されるのか

   ●灰色牛の写真

   ●昨日より、南部の町モハーチでなまはげ祭り“ブショーヤー
   ラーシュ”が始まりました。今年もまた、一番盛り上がる日曜
   日にSzagamiも駆けつけます。詳細

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   外国語会話集の革命児的存在の“指さしシリーズ”から、
   Szagami著の“旅の指さし会話帳・ハンガリー”が昨年11月
   に出版されました。テレビでも露出度が高くなってきたハンガ
   リー、更にもう一歩、理解していただけるトピックで洪牙利“通”
   になってみませんか?全国の大きな書店でも取り扱っておりま
   すので、ご興味のある方は此方のアドレスにアクセス下さい。

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       ★★★★★Szagamiのぶらぶら散歩★★★★★

   ●日本の店頭で、常にお礼とお詫びを繰り返されていたような
   気がします。ラーメンの給仕に十分以上かかると、“遅くなり
   ましてすみません。”希望する商品の在庫切れには“ご迷惑を
   おかけしまして申し訳ございません。”お客に背を向けて、自
   分の友人の用事を先に済ませるハンガリー人の店員に慣れてい
   るSzagamiは、つい“そんなに謝らないで下さい”と言いそう
   になりました。

   ●ブダペストを舞台にした映画“太陽の雫”をビデオで見てい
   たら、我が家の正面にある教会がロケ場所として登場。でも、
   その教会はカソリックではなくセルビア正教会なのですが・・

   ●ブダペストに戻って来た次の日、朝ごはんを買いに近所のス
   ーパーに出向いてびっくり。商品がなくて棚はがらがら。在庫
   切れのないお店が当たり前の日本、“牛丼”がなくなったくら
   いで暴れていたら、ブダペストは無法地帯になります・・

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