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    ----------我が愛すべきハンガリーのジレンマ----------
            第91号 2004年11月26日
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   ここ数日快晴のブダペストですが、本日の冷え込みはこの冬一
   番のようで朝8時でちょうど0度。そんなブダペストから28日、
   29日、30日とNHK-BSにて生中継をするそうですので、是非、
   ご覧になってください。

   スケジュール:NHK-BS hi
   世界遺産 青きドナウの旅
   28日(日)19:30 プロローグ 華麗なる川の流れブダペスト
   29日(月)19:30 ブダペスト 〜皇后エリザベートの夢〜
   30日(火)19:30 ホッローケー 〜はるかアジアからの民〜

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   ●貧困戦線異状なし
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   日雇いのタイル貼り助手の父親とレストランの皿洗いを母親に
   持つ、20代前半の掃除婦。手渡しでもらう2週間毎の給料は、
   数日間の食材を購入して瞬時に消えてしまう。“働いても働い
   てもちっとも豊かにならない”と嘆くが、長時間労働のために
   職に結びつくスキル取得への時間的余裕はない。またこの環境
   下で受けた教育も良いとは言えず、現状の貧困が続くスパイラ
   ルから脱け出す望みはない。家族の休みが揃う日には、ケーキ
   を焼いて集う経済的余裕が少しでも残されている彼女は底辺の
   貧困層ではなく、この国ではまだましな方である。

   ハンガリーの貧困ラインの分岐点は中央統計局の2002年集計に
   よると、一人月33900フォリント(約19400円)、また2人の
   子供をかかえる共働き世帯では125000フォリント(約71400円)
   だ。日本との物価の違いがあるので一概に比較はできないが、
   貧困ラインの一人当たりの収入は、一か月分の大型犬の餌代と
   ほぼ同額になる。科学アカデミーの統計によると、国の人口13
   パーセントの人々が貧困ライン以下の生活をしていることにな
   るが、その境界線付近の人々を含めれば全人口の3割以上を占
   めると推測されている。

   マクロ経済から観ればハンガリー経済は順調に伸び続け、EU加
   盟後の現在では更なる躍進を遂げると期待されている。しかし
   ハンガリーの貧富の差はOECD諸国内で最大の落差があり、その
   差は更に広がりつつあると感じる。昨年7月には、アルパード・
   ゲンツ前大統領が貧困を緩和するための改革を政府に要求。
   “富が二極化しており、その差を改善すべき”と貧困問題の重
   要性を強調したほどだ。

   ハンガリーの貧困問題は体制崩壊した1989年に始まったわけで
   はない。共産主義時代は資本主義と相反する“成功した社会”
   としての位置づけを確立としたものにするため、“貧困”とい
   うような目障りな問題は隔離し、国民の関心を遠ざからせた。
   この言葉自体がタブーであり、1979年に設立した貧困者救済基
   金は社会的混乱を招くという理由で起訴された。当時、実社会
   においては貧困層が確実に増加していたが、地下鉄では物乞い
   禁止、ジプシーや売春婦は怠け者としての烙印を押されていた。
   老人用の住居は中心地から離れた場所に建設され、障害者は暖
   かい季節にのみ収容施設周辺の公園への外出が許可されただけ
   であった。幸福を享受する最大公約数の人々を優先させるため、
   政府は社会の端に生きざるを得ない者達との生活域を分断した。

   旧体制が効率性を無視して生かす程度の職を就業人口に提供す
   ることにより、世代を超えても貧困層から脱却できない循環を
   一部の人々に作り上げてしまった。隔離はしたものの、国の帳
   簿が曝される資本主義に移行したことによって、国の“貧困”
   の存在が明らかになってきた。社会全体の経済がよくなること
   によって、貧困層の最低ラインも上向きにはなる。しかし、国、
   地域、個人が金銭的、職業訓練的な援助を行おうとも、資本主
   義は構造上である程度の割合の貧困層を生み出すことは必然的
   だが、3割の貧困者・予備軍とは多すぎる。更に問題が深刻な
   のは、職を持っている人々がこの貧困層に多く含まれることだ。

   1970年代の思考で止まっている多くの政治家の意識は、貧しい
   人々の生活状況の向上や総合的な支援をするよりも貧困を公的
   に否定する方が良いと判断している。しかし緊急的・一時的な
   援助ですら恒久的な貧困からの脱却は難しく、結果的には税の
   無駄遣いになることは明らかだ。また低所得者の生活向上のた
   めに短期間で急激に最低賃金の引き上げを遂行した。(最低賃
   金・2000年25500フォリント→2004年53000フォリント)それで
   も手取金額が貧困ラインの収入を上回っており、いかに多くの
   貧困者が“月給”で働いていないかを証明しただけで、根本的
   な解決には至っていない。辛抱強く長期的に取り組まなければ
   解決できない問題に付け焼刃的な政策を繰り返すことは、政治
   的解決は程遠いということを端的にあらわしている。

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   職のある貧困者ですらこの状況です。年金者・ホームレス等の
   暮らしぶりは、この時期より一層悲壮感が漂います。

   ■年金だけでは生活が苦しい高齢者

   ■クリスマスシーズンの光と闇

   ■雇用創出と賃上げの闘い

   ●ハイパーマーケットなどでは凍結防止の塩が売られ始めてい
   ます。そろそろ寒さが身に応える季節となりました。

   ■雪と氷と塩と砂

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   弊著“旅の指さし会話帳・ハンガリー”の重版決定

   全国の大きな書店でも取り扱っておりますが、下記のアドレス
   からもご購入することができますので、ご興味のある方は此方
   にアクセスされてみて下さい。

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       ★★★★★Szagamiのぶらぶら散歩★★★★★

   ●あまりお世話になりたくない税務署に久々に行って来ました。
   “日本では税制は複雑なの?滞納すると留置所に入れられちゃ
   う?”と担当のおじさんは興味津々“税金滞納は財産差押えの
   対象になりますよ”と言うと、“厳しいねぇ、ハンガリーでは
   税金を借金、でもそのまま放置”本当かな・・

   ●10月25日に日本を公式訪問した現首相ジュルチャーニ。共
   和国記念日の10月23日は国会議事堂前で行われる恒例のセレ
   モニーに、マードル・フェレンツ大統領と共に参列していまし
   た。ナジ・イムレの銅像に献花した後、SPに守られて議事堂に
   戻ろうとした時、サインを求めて首相に近付こうとした物乞い
   が。物乞いを囲もうとしたSPを押しのけ、首相はさらっとサイ
   ンを。あっという間の出来事でした。

   ●あるワイン専門店でワインメーカーによる試飲会が行われま
   した。Szagamiお気に入りのゲレ・アッティラ氏、“午前中に
   樽からボトルに入れてきた”と2003年のカベルネ・フランやソ
   ーヴィニヨンなど、試飲を心待ちにしている参加者に振舞って
   くれました。“後ろに並んでいるメルロー一本売って、市場に
   出るまで待ちきれない”と懇願しても、“あと一年は樽に寝か
   せる予定、商品としての味になっていないからダメ”と、頑と
   して受け付けてくれませんでした。ゲレ氏の妥協を許さない品
   質へのこだわりが、ハンガリーワイン業界を牽引きするメーカ
   ーたる所以なのだと改めて認識しました。

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