我が愛すべきハンガリーのジレンマ

           2001年6月25日

   ジレンマ番外編ロシアからの生の声
   
   いつも“我が愛すべきハンガリーのジレンマ”を御購読いただ
   きまして誠にありがとうございます。

   6月18日発行第23号の“物質的豊かさの後に来る空虚感を
   ハンガリー人は知る由もない”に対し、モスクワ在住の購読者
   の方から非常に興味深いレポートを頂きました。

   ハンガリーと同様の元共産圏であった旧ソ連の“今”の現状を、
   お住まいでいるからこそ見えてくる様子を生の声で伝えていら
   っしゃいます。

   皆様にぜひご紹介したく、号外番として今回“ジレンマ”を発
   行した次第です。

   (中略)
   モスクワの現状を見てみれば最近の成金趣味にはうんざりしま
   す。確かにこれだけ周りでお金で買える贅沢だらけになるとお
   金がないのはとてもつらい。それは分かります。でも全体に物
   質主義が蔓延した今、ロシアが失いつつあるものはまさに心そ
   のものです。

   若い層の派手な趣味、ベンツや外国の新車に乗る様子、シャネ
   ルのバッグ、お年寄りの物乞いには目もくれません。まるで“我
   が世の春”です。劇場ではいくら切れといっても絶対に誰かが
   携帯電話の着メロを鳴らしている現状。

   (中略)
   貧しい人との格差は埋まりようもなく、ニュースでは地方でガ
   スも電気もない生活をしている人たちの絶望的な表情にチェチ
   ェン戦争。都会の人はそんなことには無関心。

   若くて美人でコネがあり、首都圏や情報の入る圏内にいて、才
   能や特技がある若者は海外に出て外国の企業や政府のお金で生
   活し外国人と結婚する。その外国で贅沢をしているのに、結局
   ロシアが懐かしい。

   ロシア人同士で集まるとどこの国でもロシア語ばかり喋ってい
   る。離婚も多くあると聞きます。外国の裁判所で子供の扶養件
   争いの話など。

   (中略)
   家庭事情も複雑であったり外人コンプレックスのある人も多く
   いて、かなり秘密主義なのかもしれません。

   文部省留学ができるように一生懸命手伝ったロシア人の友人の
   最後の言葉が、“日本に行ったらかなり理想と違っていた。い
   ろいろ嫌なことがたくさんあって疲れた。私がどうして一生日
   本に住みたくないかあててごらん?”

   いくら勉強はできても“物乞いは恥さらし”としか言わない。
   私は必ずしもそうとは思えないのです。ジプシーのように、そ
   れを人生哲学にしている人たちだっているし、彼らは彼らでロ
   シア人よりも誇り高い面もある、私はそう思っています。

   人間にはそれぞれ事情がありますし、特にロシアのような国で
   まともに一生懸命暮らしていても突然起きた出来事で人生が変
   わってしまうことだってあるのに、それが分からないのはとて
   も身勝手に思えて仕方ないのです。

   もちろん同情だけでなくて自分たちでロシアを変えようという
   動きがなくてはいけないと思いますが、飲んで歌って一緒にな
   ってぶらぶらしているうちだけ友達という感じです。結局彼ら
   は弱いのでお互いに集まってだらだらしている、そういう若者
   が増えてしまったのは残念です。

   (中略)
   結局自国人のことを同情したりしないので、ロシアにいる外国
   人の苦労は微塵も理解できない。友人が“ロシアのどこが嫌い
   か”と聞くので答えると不愉快になってしまって。

   (中略)
   裁判での賄賂の話もロシアでも当然ありそうなことです。

   共産主義的な閉鎖主義をしていて不幸になるのはその国の国民
   です。それでは発展もなにもありません。いつまでも賄賂がま
   かり通るのはロシアも同じです。いまや大学入試の半分以上の
   席は(特に兵役免除になる大学)お金で買われているという話
   だそうです。どんどん堕落しているのが目に見えるようで悲し
   い。

   でもきっとこのままではいけないと思っている人もいるはずで
   す。ハンガリーのような素晴らしい国ですもの。ロシアも広い
   のでモスクワだけを見ないようにしています。どんな国にも一
   般の諦め層もいれば、“なんとかしなければ!”という心のあ
   る人たちもいるはずです。

   (この度は“ジレンマ”にて皆様にご紹介しますことを快くご
   了承頂きましてありがとうございます)

   ロシアへの“ジレンマ”をお伝えいただいていると同時に、急
   激なる経済成長により生まれてしまった閉塞感が手にとるよう
   にわかります。

   旧ソ連崩壊直後は、モスクワ大学に通う超エリートの美人な女
   性達の最も人気のある職業が外国人観光客や駐在員を相手にし
   たコールガールだという話がありましたね。確かに1990年
   代初期にモスクワやサンクトペテルブルグのホテルに滞在した
   時にはモデル並みの女性達が入り口やトイレにたむろっていた
   のを覚えています。

   旧ソ連の市民に対する締めつけはハンガリーとは比べ物になら
   ない位厳しいものがあり共産主義への反動でもあるでしょうし、
   一方でロシア人という国民性には西側諸国の民主主義が合わな
   いことの証明でもあります。健全なる公共心が社会的に建設さ
   れる前に、西側からの経済市場がなだれ込んでしまったようで
   すね。

   最近ではハンガリー内でのロシア人(特にウクライナ系)が数
   多くの問題を起こすため、ロシア人に対しハンガリー入国への
   ビザ発行義務を遂行するとかしないとかの話が出ています。

   グローバリゼイションやヨーロッパ・スタンダードという言葉
   が日本の紙上でも声高に伝えられていますが、これは西ヨーロ
   ッパの概念のことではないでしょうか。その土地には長い間時
   間をかけて育まれてきたそれぞれの歴史や文化が存在します。
   一つの型にはめ込もうとすれば摩擦を引き起こすのは必然のこ
   と。きっぱりと拒否する勇気を国民が持つか、自国の文化を保
   持しながらも外国の違う文化との融和を寛大な度量でもって受
   け入れるかどちらかなのでしょう。

   皆様のご意見・ご感想がございましたらメールでのお便り、ま
   たはホームページ“ハンガリー良いとこ一度はおいで!”の
   掲示板への書き込みをお願いいたします。それでは金曜日には
   通常の“ジレンマ”を発行いたします。

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