パンノンハルマ Pannonhalma 02
  2005.Oct.

 ブダペスト東駅より急行電車で約1時間40分、ハンガリー第六の都市ジョールにてバスに乗り換え30分程の揺れに身を任せていると、久々に訪れたくなったパンノンハルマの修道院が“聖マルトンの丘”の頂上に見えてきました。中腹にある停留所で下車、心地よい風の吹く爽やかな秋晴れの中を、足取り軽やかに修道院に向かって上り坂を歩くことおよそ10分。しかし、ユネスコ世界遺産に指定された直後にたびたび出向いていた頃の数年前と様子が違い、大型バス用の駐車場入り口の脇に立派な門構えのインフォメーション・センターがありました。ここは素通り、急な坂道を入り口まで黙々と登っていきました。適度に汗をかいた後、まずは今回の目的を達成するがためのチケットを購入。と売り場を捜すもチケット売り場がない。門番に聞くと、“今年の春から全ての入場券は駐車場横のセンターで販売しています。”心地よくかいた汗が一瞬にしてひいてしまいました。

 

 我が侭な旅行者は、修道僧は清貧な生活を営んでいるものと思いがち。でも、その共同生活の場には全く似つかわしくない銀行のような受付にがっくり。院内各所で改修工事が行われますます綺麗になっていくことも、ユネスコからの援助金の有効活用が板に付いた結果でしょう。各係員はモニターを見ながら、内部の催し物や見学についての情報に対する問い合わせの電話対応しています。まずは今回、Szagami“修道院再訪の最重要目的”ワイン蔵見学のチケットを購入。全寮制のお坊さん養成学校が併設する修道院内でワインが醸造され、しかも試飲できるなど、Szagamiでなくても興味をそそられるはず。“薔薇の名前”のようなおどろおどろしさを勝手に想像して、期待は膨らむばかり。
 
 政治、紛争など混沌としていた中世、ワイン生産は時代の一大産業に位置づけられていました。そして農地開拓、作付け、葡萄の管理、葡萄摘み、ワイン作り、保存・貯蔵が一連の流れを持って成しえることのできる場所は、当時安定した組織を持っていた修道院しかありませんでした。そのためパンノンハルマでも同様に、ワイン生産は修道院が最初に建てられた996年から修道僧の手によって行われてきました。しかし、残念なことに共産主義時代に葡萄畑が接収され、1000年近く続いてきたワイン生産の伝統も長い間途絶えてしまいました。このほどMKB銀行の投資により2002年にワイン生産のための新施設が建設され、“修道院のワイン”が復活。バッカスならぬ案内係に導かれるままに修道院の正門を通り過ぎ、醸造施設の入り口へと直行します。

 丘の斜面を利用して建てられた4階層の建物の最上部から村を一望すると、麓の醸造敷地内では工事人が大忙し。団体客が楽しめるテラス、お父さん達がワインの試飲に酔っ払っている間に子供達が暇を持て余さないための遊戯室など、2008年まで建築計画が詰まっているとのこと。真新しいドアを開けるとステンレスの発酵タンクが整列。昨年から醸造が始められたばかりなので殆どのタンクが空、今年の葡萄の収穫が待ち焦がれます。18m下にある最下層部へ、エレベーターで一気に下がります。貯蔵樽の並ぶ試飲室で、修道院ワインがお待ちかね。



完成されたばかりの試飲室で、オラスリズリング、ライナイリズリング、トラミニの3種類の葡萄が使われているTricollisをテイスティング。ワイン生産が復活して間もないため市場にでているのはまだこの一種類。1999年に今年のワインメーカーに輝いたエゲルのガール・ティボル氏指導の下、最短期間で国内のワイン大会で銀賞を獲ったと言うご自慢の商品です。次回リリース予定のワインZefírとChardonnayも頂きました。“まだ味が変わる行程にあるから、あんまり批評しないでね。”と、一緒に試飲を楽しむ案内係のお姉さん。それでも、何故修道院の地下を再開発せず完全に新しい設備を建設したのか、そこの地下は一般公開しないのかといった意地悪な質問には口が滑らないことに、プロ意識を感じます。
 
 残念ながら近代的設備の見学のみで物々しい歴史的な地下は拝見できませんでしたが、是非、世界遺産の丘でつくられたワインをテイスティングしてみてください。

 ほろ酔い気分のまま夕方に始まる修道院の聖堂でのコンサートへ。イースターやクリスマス時など、定期的に音楽の催し物が行われます。本日の演奏会はフルートとクラリネットのデュオ。係員に導かれて聖堂内の簡易席に座りました。聖ベネディクトのステンドグラスからわずかに漏れる薄光と相まって、不思議な空間を演出していました。コンサートが終わる時刻には、トレーナー姿で丘近辺を走り込む修道院の学生達が院内に戻ってきました。“彼らは皆、修道僧になるのでしょうかね?”Szagamiの無邪気な質問に門番は大笑い。“300人の学生のうち、まともに坊主になりたがる奴なんて三人もいない。”
 
 翌朝は内部見学ツアーに参加。チケット売り場2階の視聴覚室に案内され、修道院についての概略と修道僧たちの生活のDVDを見ます。神やキリストに近付くために日夜精神の修行に励んでいるとのこと。
 
 10分ほどでDVDが終了。ガイドと共に、足場が木の板でできた真新しい手摺付きの遊歩道を歩いて院の敷地へと向かいます。パンノンハルマの街を一望できる広場へ行った後、図書館へ行くとの説明に釈然としない Szagami。肝心な大聖堂内部や回廊には行かないとは。こんなことなら昨晩の演奏会時に聖堂内の写真を撮っておくべきだった・・結局、図書館と展示室しか内部を見ることができませんでした。(修道院全般の説明は、パンノンハルマ01で)
 
 6、7月に満開になるラベンダーからつくられたラベンダーオイルが依前としてお土産物屋の棚を艶やかに飾っています。18世紀のレシピ通りに仕上げられた、15種類の薬草が調合されている薬草リキュールが土産物の新メンバーに加えられました。過去の遺産を掘り起こしたり、再開発のために現代の最新技術を導入したりと、ユネスコ遺産は大忙しです。
 
おまけ:
 
 ハンガリーではワイン産地が22地区指定されていますが、パンノンハルマのネームバリューは他の地域に比べていまひとつ。そこで品質向上と大規模経営を目指す修道院ワイン製造は、エゲルのワインメーカーの星、ガール・ティボル氏指導の下、着々と下地を固めています。既にブダペストのグンデル・レストランのワインリストにも名を連ねることに成功。それに対して、外からの投資など見込めない小規模ワイン生産家は、独自の道を歩んでいます。そこそこの品質を提供、ワインを楽しむための演出が素敵なパンノンハルマのワインセラーをご紹介いたします。パンノンハルマのバス停から徒歩1分、Borpince(ワイン蔵)と書かれた看板の建物になります。外観からは想像できない手入れが施された可愛い中庭、試飲の準備をする間のウェルカム・パーリンカ、テイスティングの前に一杯スピリットでエンジン始動。蔵の扉を開けると、蝋燭の火の光に浮かび上がるワイン樽が目に入ってきます。5種類6杯飲んで中庭に戻ると、陶器のデカンタにまたワイン。修道院のお膝元でおつまみをつまみながら気持ち良くなるSzagami、千鳥足で隣のレストランへ昼食をとりに向かったのでした。皆様も修道院のワイン蔵だけでなく、昔ながらのパンノンハルマ・ワインを楽しんでみませんか?
 
Pannonhalma Borpince:住所 Szabadság tér 6

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