エゲル Eger
     2005.Oct.

みんなでアル中になろう!

 “雄牛の血”で有名な赤ワイン、エグリ・ビカヴェールはトカイと並ぶハンガリー・ワインの代表格。ビカヴェールの産地であるここエゲルはハンガリーの伝説の英雄ドボー・イシュトヴァーンがトルコ軍の攻撃によく耐えた街としても知られております。しかし、飲み助にとって堪えられないのが70以上ものワイン・セラーが連なる“美女の谷”。市内観光もそこそこに谷であなたもワインに溺れませんか?

交通:
ブダペスト東駅より電車で142km。車で127km。
電車、バス共に毎日運行。電車の所要時間ICで約1時間40分(1日2本)、その他の電車で2-2時間半。
バスはシュタディオンStadion M2の発着所から2時間程。

酔っ払う前にさっと終わらせよう市内観光

 電車で到着したら駅の目の前のVasút u.を進み、大きな道Deák Ferenc u.を右に曲がって10分くらい歩くと大きな大聖堂が正面に見えてきます。バスの方はこの大聖堂のすぐ裏側に到着します。この大聖堂は左右の塔が54mと中央のドームより高くハンガリーでも有数な大きさを誇りますが、エステルゴムの大聖堂の3分の2にもなりませんので少々迫力不足かも知れません。街には観光スポットへの矢印が建てられているので地図がなくても目的地に行けます。市街の中心部ドボー広場へ行くと、サーベルを天高々に挙げている像が見えます。

雄牛の血をがぶ飲みする伝説的英雄   

ドボー・イシュトヴァーンの像

 ずいぶん偉そうな奴だなぁと思ったら実はハンガリーの英雄の一人ドボー・イシュトヴァーン Dobó István。彼は1552年無敵を誇るトルコ軍の攻撃から僅か2000名の兵士でエゲル城を守り抜いたのです。トルコ軍の凄じい総攻撃は執拗に6回も行われたにもかかわらず撃退したため、ブダが陥落した後、間もなくウィーンもその手に落ちるのではという嫌な風をヨーロッパから消し去った英雄として伝えられています。彼は度重なる戦で兵士の士気が下がってきたのを察知するや否や、エゲルのワイン・セラーを開けさせ兵士の英気を養えさせました。エゲルの赤ワインにがぶつく兵士をトルコ軍が見て“ハンガリー人は雄牛の血を飲んでいる!”と驚き退散していったという尾びれ付き。その話が元でエゲルの赤ワインがエグリ・ビカヴェール(エゲルの雄牛の血)と呼ばれるようになったとか(その後ドボー率いる軍隊も1596年の戦いで敗れてしまいますが・・)。この広場にあるトルコ軍との戦いが描かれているもうひとつの像の方がドボーさんの銅像よりトルコ軍との厳しい戦いをリアルに表現しています。

おでぶなハンガリー人はどうやって登る?ミナレット

ミナレット
 続いてミナレットMinaretへ。
エゲルのシンボル的な建築物で、1841年までは隣にモスクが併設されていました。閉所恐怖症と高所恐怖症でない方はぜひ登ってみましょう(冬場は閉鎖)!かなりきつい、そしてめちゃくちゃ狭い97段の階段を上り切ると街並みの風景が広がります。ただし低い手すりと幅40cmにも満たない所からの展望は恐怖症でなくてもスリル満点。
丘の上にあるセルビア正教会であるラーツ教会Rác templomもなかなか興味深い建物です。ミナレットから7、8分くらい。主祭壇のきれいに並べられたイコンも目を見張りますが、後ろに展示されている17-18世紀の展示物の方が見応えがあります。

 それでは最後にエゲル城へ。

 元々13世紀後半に建築が始まったエゲル城、ドボー・イシュトヴァーンがトルコ軍に敗れるまで使われていましたが、その後は今世紀に入るまでその価値が忘れ去られていました。現在も修復作業と発掘が続けれていますのでこれからも新発見があることでしょう。内部には博物館があり大砲が実際並べられている所では、現在使われている電車の線路に照準が向けられていて時代が交錯します。

エゲルの街並み

“美女の谷”へいざ行かん

 そろそろエゲルのワイン・セラーが群生する美女の谷Szépasszony völgyに行きましょうか。お城から歩くとたっぷり40分はかかるので疲れてしまった方はタクシーで。まだ元気の余っている方はお城の出入口にあるドージャ・ジョルジ広場Dözsa György térからコシュト・ラヨシュ通りKossuth Lajos u.をまっすぐに進み、大聖堂前の交差点から矢印に従って歩いていきます。大聖堂に着く手前、コシュト・ラヨシュ通り9番の郡庁舎の建物の中庭に続く入り口脇の門を覗いてみてください。ドイツのヴュルッツブルクのHenrik Fazolaによって作られたすばらしい作品です。

 ようやく美女の谷に到着。たくさんのワイン・セラーがありますが、全てを制覇しようなんて考えないで効率よく1番のワイン・セラー周辺から飲み始めましょう。その周辺には食事処が数件軒を連ねています。スープからきちんとした食事まで用意されていますので飲む前にお腹をいっぱいにしておきましょう。さていざ行かん!

体験記:美女の谷・ソムリエだって酔いつぶれちゃう?

 この美女の谷だけでも60とも70とも言われているワイン・セラーの数ですが、飲む前に数えればいいものの正確にその数を知っている者はいないようです。

 今回は4月の訪問、シーズン真っただ中ではないのでいくつかのセラーは閉まっていました。それでも季節問わず、曜日問わずでいつでも楽しめます。 

美女の谷のワイン・セラー

 まずは前を歩いていたおねーちゃんが入っていった41番のセラーへ突入。このセラーの持ち主の娘らしく中のカウンターでむしゃむしゃと昼食。邪魔をしたのでヘソを曲げたのかあまり商売っ気がない。取りあえず味見と言うことでビカヴェールBikavér、ムシュコターイMuskotályとレアーニカLeánykaを。このビカヴェール、こりゃいける!おねーちゃんもっと呼び込みすれば商売大繁盛の味なのに、とついつい日本的ビジネス戦略を勝手に練ってしまうのですが・・・100mlのグラス3杯で44フォリント(約23円)也。

 お次はどこに入ろうか?

 手招きの赴くままに31番のセラーへ。 このオーナーのシャンドールさんは英語もO.K.。分厚い記帳書を出してきて“こんなに日本人が飲んでいってくれた!”といろいろ説明。隣で飲んでいた現地の常連さんも加わって話が盛り上がり、商売そっちのけ。勘定は?と聞くと今度友達を連れてきてね、いっぱい宣伝してねと1銭も受け取らず(ここで宣伝しました!)、さらにその常連さんには意味もなく20フォリントを握らされ、5杯飲んで20フォリント儲けた?のでした。ワインの味はと言えば、ムシュコターイがさわやかでした。

 さてちょっと気持ち良くなって向かいの29番のセラーに入ると壁には何やらワインの資料がたくさん。ここに住んでいるのかと思うほどの生活臭。更におやじ、お客がいるのに丸無視。ビカヴェール、メルローMerlotを飲むもちょっと口に合わない。と言うからではないがただになった。

41番ワイン・セラーの樽
 そんなにただ酒が飲めるのかと目の輝いたあなた、ここでの料金システムをご案内いたします。味見(100ml以下のグラス)をした後、リットル単位でワインを買うと味見の分は無料になる場合と、最初から1杯いくらと決まっているセラーがあります。ただより高いものはないという通り、ただで味見をした後、セラーによっては何か買わなければというプレッシャーが待ち受けているので、グラスできちんとお金をとる方が気持ち良く飲めます。(リットルで買っても100-200円位ですからそんなに深刻になる必要はないのですが不味いときに困る)

 酔い防止のため既に市内で昼食をとっていたのにもかかわらず、グヤーシュ・スープとホット・サンドウィッチmeleg szendvicsを胃の中に押し込み、先ほどのシャンドールさんの母親が経営している6番セラーへ。6番セラーのおばちゃん陽気な太っ腹かーちゃんと言ったほうがいいでしょうか、何せ陽気でよく喋る。ここで3種類飲み比べビカヴェールを購入。

 19番のセラーは何やらハンガリー人の若者たちでいっぱい。その中を分け入ってみると41番とは大違い、たくさんのワインを上手にディスプレーしてあり、おねーちゃんが矢継ぎ早に次は?次ぎは?とグラスに注いでいくのに乗せられて、ついついあれもこれも注文してしまった。ビカヴェール、メルロー、ハールシュレヴェルーHárslevelű、レアーニカと飲んだけれど、どうも購入する気にならない(1杯30フォリント)。レアーニカはまずくて半分でやめてしまった。

 さて気を取り直してとなりの20番セラーへ。中にきちんとした民族音楽の楽団がいるが演奏する気配まったく無し。ケークフランコシュ Kékfrankosとムシュコターイを頼み飲んでいると急に楽団がわさわさと演奏し始めました。団体客を連れているガイドさんが入ってきたので一生懸命だったのでした。個人客をなめるなよと思いましたが、ムシュコターイのうまさに負けて1リットル購入。

 結構気持ち良くなって現地人に流行っていそうな12番へ突入。無愛想なおばちゃんにまずはビカヴェールを頼む。少し飲んだら何リットル要るのかと聞いてくる。ちょっと待って、ほかの種類も飲みたい。次にメルローを頼み一口飲むと“何リットル要るの?”とまた聞いてくる。えらい強引だが営業力がある。そんなことしなくてもあんたの所のワインはうまい。そんなこと言ったら何リットル買うはめに?と思い、ひとこと“これ1リットルください” と無難に切り抜けたのでした。

 ほろ酔い気分でかなり気持ち良くなり、満足したのでそろそろ切り上げることに。あっ、最初の41番のビカヴェールを買わなくては。

 今回は結局7つのセラーで合計23杯、戦利品がビカヴェール2リットル、メルロー1リットルとムシュコターイ1リットル、絞めて4リットルでした。

おまけ・エゲルサローク Egerszalók 2004年3月19日

 一杯ひっかけた後はやはり温泉?それとも飲みながら浸かるのか、浸かりながら飲むのか?エゲルは赤ワインだけでなく温泉も非常に充実しており、2003年に新装開店した施設もあります。でも折角でしたらちょっと変わった露天風呂で身体をほぐしてみては如何でしょうか?

 エゲルの隣町はエゲルサローク、ブドウ畑に囲まれたなだらかな丘を車に揺られること約10キロ。あそこの畑のぶどうは何のワインになるのだろうなどと考える間もなく、地下にワイン・セラーを構えていそうな家並みが近付いてきました。


 温泉とワインのマリアージュに思いを巡らせていると、何やら前方の林からモクモクと煙が。地下400mから湧き出している約70度の鉱泉がふんだんに使われている露天風呂。温泉プールのようで水着は必須。更衣室やシャワー設備はお湯から離れているので、サンダルがあると便利です。


 寒くて心臓麻痺でも起こしそうと眉間にしわを寄せていると、“こういう雪の日こそ、エゲルサロークに浸かる醍醐味がある”とはエゲル人。夏のシーズン中は24時間オープン、冬は朝7時から夕方4時まで営業しています。お湯に浸からなくても、見学のみの入場券もあります。源泉の周辺には湯の花ができており、効能がたくさんありそう。


 温泉管理人の一人が直接源泉からコップに熱湯を入れ、美味しそうにインスタント・カプチーノを堪能。ファインダーを向けると、“僕を撮るの?それともカプチーノ?”今日の主役は鉱泉カプチーノで決まり。


ご意見ご感想などはhungary@szagami.comまで 
All right reserved Copyright Szagami 1999-2005