ヴィッラーニ Villány
    2005.Oct.

赤ワイン造りに熱い男達の村

 ハンガリー・ワインと言えばエゲルの雄牛の血“ビカヴェール”や貴腐ワインのおいしい“トカイ” が日本での有名どころ。でもまだまだ日本にはよく知られていない銘酒を製造する村々がハンガリーにはたくさんあります。なかでもヴィッラーニの赤ワインはその代表格。ヨーロッパ各地で賞を獲る強者達ばかり、世界中がヴィッラーニを求めてやってきます。貴方も手ごわい相手に通ぶって挑戦してみては?

交通:
ブダペストの南駅から電車、エリジャベート広場からのバスでペーチまで。ペーチから乗り換え、バスは直行便が非常に少ないので電車が便利。所要時間ペーチから50分前後。またはブダペストのエリジャベート広場からバスの直行便でモハーチまで。モハーチから電車で約30分(但しモハーチの駅からバスターミナルまで徒歩30分くらい)。

閑散としたシーズン・オフ

 ついに憧れの村ヴィッラーニを訪れるチャンスが来ました。ヴィッラーニの大御所Gere Attila, Bock József, Maratinski Kúria, Gere Tamás, Vylianの味を思い出すだけで口の中は唾液の洪水。近郊モハーチには毎年ブショーヤーラーシュのお祭りに行っているのですが、都合上ヴィッラーニ詣では長い間はずし続けていました。バスでの移動途中、農地や牧草地の景色に時々目に入る鵜や鷹の出現を楽しみます。

 今年は記録的な暖冬のためブダペストでは殆ど雪にお目にかかりりませんでしたが、小高い丘が連なるペーチ周辺はさすがに寒く、夜に少々舞った雪が春には緑で覆われそうな土地を白く化粧していました。午前中から酔いどれ今回の目的はVillanyFiveと呼ばれるワイン造りの名士の蔵でひたすら飲む!ヴィッラーニ・メイン通り村の真ん中を貫く中央通りのバス停でバスを降り、一直線に向かうはゲレ・アッティラGere Attila氏の経営するペンション。

 電話で予約した際には、奥さんの対応に大変恐縮。(何といってもの憧れのゲレ氏の奥方と直に話してしまったのだから。)
ペンションのドアを恐る恐る開けるとちょっと気難しそうでハスキーボイスのカタリン夫人が出迎えてくれました。到着したのが昼の11時と早く、まだ部屋の用意が出来ていないとのこと。その間試飲を勧められました。

 早速7種類のワインを試すことに。たまにブダペストで頂くキュヴェー・フェニックスCuvee Phoenixを生産地の製造元で拝めるとは・・・ブダペストから持参したチーズを広げて一杯づつゆっくり味わいます。

個人の蔵元だって、味はピカいち

 部屋にチェックインする頃にはすっかりほろ酔い気分。お腹の虫を落ち着かせるためレストラン探しへ。ペンションを出るとまさしく目の前が中央通り。残念ながら観光客用に立ち並ぶワインセラーはシーズンオフのため殆ど閉まっていたけれど、酔いざましにぶらぶらお散歩を。

 一人のおじさんが声をかけてきました。

 “ワインを飲みに来たのかい?ここの通りは試飲の値段が高いからだまされてはだめだよ、良いところを紹介するけれど一杯どうだい。”お腹の虫と相談し、ちょっとだけねとその申し出についていくこと10分、実はおじさんのプライベート・ワイン・セラーでした。

 蔵の入り口には趣味で25年以上かけて集めたブドウ摘みに使用するハサミが壁に所狭しと飾られていました。150年前のハサミもあるとのこと。10月に行われるワイン祭りの際、ワイン博物館(月曜休日休館10時〜ヴィッラーニのワインの歴史、100年以上前のワインなど展示)展示のため貸し出したのもご自慢。   

カーロイおじさん カーロイおじさんの蔵
 

 蔵に入る階段を一歩降りただけで樽の香りがしてきました。商売上手と思いながら勧められるままに、からっぽな胃袋に立て続けで白、赤、自家製のパーリンカを含め7杯も飲んでしまいえらく効いてしまいました。お暇する前にワイン購入を申し出るも、“昨年のは皆売っちゃった”。単におじさんは自分のワインを自慢したかっただけみたい。通りすがりの観光客に振る舞ってくれたワインは心のエンジンとなりました。

ついに蔵元Gere Attila氏とのご対面

 遅めの昼食の後、夜はペンションでちびちびとやることに。ペンションの食堂ではグラス単位で飲めるのに“ここに置いときます?”とテーブルの上にボトルごと出されたら、それはもう断れない。(キッチンが無いので料理は提供していない。)隣の部屋ではケータリングで運ばれてきた子豚の丸焼きを囲んで商談で来たらしい10人の男性陣がドイツ語とハンガリー語で盛り上がっている。その時蔵元でペンションのオーナーであるゲレ・アッティラ氏が登場。家主自らお客人を接待。ゲレ・アッティラ氏日本でいう旅館のおかみと主人なのだが、世界的に賞を獲っているワインを創り出し、専門雑誌にしょっちゅう登場しているゲレ夫婦はヴィッラーニのワインをこよなく愛する者にとっては崇拝する人物なのだ。芸能人の追っかけ状態で、ゲレ氏の接待の合間に写真撮影を依頼すると、“じゃぁ、ここにちょっと座ろうかな?”と横に椅子を持ってきて話し始める。さすがワインのクオリティーを長い間数々の競合相手がひしめく村で保っている人物だけあって、伺った話しも非常に興味深いことばかり。

 今でもハンガリーではワインが質より量でしか評価されず自分の作るワインのクオリティーの向上に一般市民が理解しない、共産時代にワイン生産の技術が立ち遅れたため、イタリア、スペイン、ポルトガルのワインにハンガリー・ワインが取り残され、僅か政変後10年余りで西側のクオリティーに追いつかなければならなかった苦労話など。

 更にはアッティラおじさんの人生観や世界観まで幅広く話を聞けました。“ここ10年、仕事に埋もれてあっという間に時間が経ってしまった。最近家内と話すのは、何のために仕事ばかりするのかということ。自分達の人生を楽しむ他のことがしたい。ちょっと疲れた・・・”という言葉がため息とともに。

 携帯電話で仕事に追いかけられる忙しさ、3日後にはワイン紹介でロンドンに出張予定の中、冷静に自身の人生を考えていました。

赤ワイン大御所Bock氏登場

 翌日も中央通りの蔵が開く様子がないので、それではともう一つの目的地ボック・ヨージェフ Bock József氏の蔵へ直行。小さな村ヴィッラーニどころかハンガリーワインの一任者の一人、1998年イヤー・オブ・ザ・ワインに輝くばかりでなく、世界中のワイン大会で金メダルを獲っている実力者。

 ペンション(ボック氏もペンションを経営している)の入り口を開けるといきなりステンレス・タンク。案内係に誘われるがままに2階の試飲場所に。ボック・ヨージェフ氏寿司屋の松竹梅もどき、白・ロゼ・赤の種類を組み合わせたワイン・テイスティング・セットが4杯用(たしなむ人用?)、6杯用、10杯用(大酒飲み用?)コースに設定されている。6種コースのワインを試飲中、ここにボック・ヨージェフ氏登場!背後の大きな試飲用テーブルでイタリアのコルク会社のプレゼンテーションをつまらなそうに聞いていました。完全に上の空のボック氏、電話の呼び出しで席を立った隙に1枚写真をお願い。ひとこと二言しか言葉を交さなかったけれど、その笑顔がこちらの心を幸せな気分で満たしてくれました。

特級赤ワインで至福の波に沈没  

ボック氏のワイン蔵 地下に眠るワイン
 

 案内係に蔵の見学を申し出て地下に貯蔵される何百もの樽と何万本ものラベル張り前のボトルを拝む。小さいタイプの樽からは225リットル、300本のボトルが取れるわけです。気分だけでもヴァッカス。ロイヤル・キュヴェーRoyal Cuvee93年の秘蔵っこは発見できませんでしたが、きっとどこかに隠れているはず。今回は94年のメルロー2本を手土産に帰路についたのでした。


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