ティサ川大洪水を訪ねて
    2005.Nov.

床上浸水!

 
 豊かな水流に泳ぐ多種多様な魚を狙って、釣りを楽しみにハンガリー各地からやってくる客で賑わう牧歌的なティサ川。ところが、人間の力ではどうにも止められない牙を剥いた。昨年と同様今年もまた、雪解けと大雨による洪水で多くの村が被害にあいました。

 実は昨年1月、国境をまたがる上流から流れてきた化学物質でティサ川が汚染されるという国際的事件も起きています。ダブルパンチならぬトリプルパンチでここ数年厄年続きのティサ川ですが、洪水問題や水質汚染は今に始まったことではありません。

 ハンガリーがまだハプスブルク帝国の一部だった頃、貴族の政治家であったセーチェニ・イシュトヴァーンが推し進めたハンガリーを近代化にすべく壮大な計画の一つ、ティサ川氾濫を人工的に押さえようとしたことが150年を経て仇になるとは誰が考えたでありましょうか。

 今回大洪水のティサ川視察ツアーのメンバーは、北米企業からの出張で5週間ほどハンガリーに滞在された方。帰国3日前に嫌なトラブルに巻き込まれ、“そんなことでめげている場合ではない、もっと不幸な人々がハンガリー東部で悲鳴を上げている!”と元気づけるため?ティサ川の玄関口と称されるソルノク Szolnokへ車をとばすこと1時間半。

 ブダペストから東南東100kmに位置する街で、ティサ川での遊覧や釣りの拠点地として知られています。途中丘陵地帯はまったくなく、時々林が見える程度の真っ平らな平原と畑の単調な景色が延々と続いています。街の人口は8万1千人、車で10分もすれば街の端から端を横切ることができます。

 道のアスファルトは乾いているし濁流が押し寄せた形跡もないので、本当に洪水は起こったのかと心配?した瞬間、濁流が湖のように広がり歯止めの利かなくなった幅の広い川が見えてきました。その中に整えられたように配置されている一列の木々。まるでアジアの海辺の高床式のログハウスで、水上生活をしているかのように足場が水に浸かってしまっている家々。水に突っ込んでいる坂道。次々とショッキングな光景が目に飛び込んできました。喜んでいるのは泥地化した住宅地で気持ち良さそうに泳ぐ蛙だけ。浸水する前に堤防を築いたり、ビニールシートを張った痛々しい後も残っています。

 昨年ルーマニアで操業している工場からシアン化合物が流出し、多くのティサ川支流が汚染されて、この街の観光業や漁業に深刻な打撃を与えたことを思い出すとレストランでは折角の名物川魚料理を選ぶことができませんでした。風評は怖いものでウェイターは釣り目当ての観光客がめっきり減ったことを嘆いていました。浸水がひどい家は親戚や知り合いの家に避難中ですが、洪水の被害はかなり落ち着いたことを教えてくれました。ソルノクはティサ川の玄関であるため、日本のニュースで取り上げられたルーマニアやウクライナ国境周辺の街や村と比べて被害はそれほどでもないようです。

 数日後、被害の酷かった地域の子供たちがブダペストに一時避難している様子がテレビで放映されていました。その子供たちが引率者に連れられてヴァーツィ通りを歩いるのを偶然に見かけた時は、大都会に戸惑いながらも明るい元気な笑顔を見ることができました。

 ハンガリーにお住まいで携帯電話を持っていらっしゃる方は、どの電話でも局番なしの1749に掛ければ自動的に100フォリント分の通話料金がティサ川大洪水復興の基金に充てられます。


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