物価 1999年版
    2005.Nov.

自由を手に入れた後、豊かさは手に入ったのか?

 海外で仕事をするればその国の物価に敏感になりますし、海外旅行をすれば“この国の平均給与は?”なんてことに興味津々になるのが人の常。

 スーパーマーケットや市場で目に入る品の値段を見れば、日本との物価を比較することは簡単ですが、現地人の平均給与と物価の比較をしてみないことには彼らの本当の生活は見えてこないのでは?

 ところがこの“平均的”と言う言葉は日本のように貧富の差が余りない国には有効ですが、アジア、アフリカ諸国はもちろんのこと、欧米諸国でさえもその言葉はあまり通用しません。

 あえて政府の発表通りに従えば1998年ハンガリー人の一人あたりの国民総生産は4650ドルでした。

 脱税が難しい給料横並びのサラリーマンが多い日本では、それなりの機関によってはじき出された統計の数値の信用度は高くなるでしょう。しかも“平均値”は最も興味のある数値。

 しかしハンガリーにおいては、インフレに苦しみ本職だけでは食べていけない一般市民の申告されない副収入、一握りの高所得クラス、はたまた小さい会社で堂々行われている領収書のはっきりしない怪しいお金のやり取り、レジ打ちを調整するレストランなどを見るにつけ、政府が発表する資料が人々の現実の生活を映し出しているのか疑問に感じます。(マル査が入ってきたらどれほどの中小企業が検挙されないですむのでしょうか)はたまた“平均的”な人々なんて存在するのかと多いに疑問を感じるのです。

 税引後の平均給与を紹介すると:小学校教師3万5千フォリント(160ドル)、警察官4万4千-5万フォリント(185-230ドル)、店員3万-4万フォリント(140-185ドル)。

 1989年の政変以来、多くの人にとって共産主義的思考回路から資本主義的回路に変えることは容易ではなく、損をして得を取れという考えなどなく、お金は獲れるときに獲らねばという感覚が身に染みついています。そのため大手法人幹部が法外な給料を獲り、それ以外の社員は薄給に甘んじるという構造が蔓延しています。

 1998年ある倒産しかけた銀行幹部の給与が暴露されましたが、それによると何と月に900万フォリント(当時のレートで約530万円)ももらっていたとの事。(労働組合の概念もまだ発達しておらず、1999年初めて国鉄の大規模なストライキが起こったばかり)

 政治家もまた然り、まずいとなると公金を横領して海外逃亡をする有り様。(1989年以来3回の選挙で同一政権が選ばれないと言う事態が、この国の政治家の国民信頼度を表しているのではないでしょうか)

 一方、現首相オルバーン・ヴィクトールが1998年末インフレを10%程度に抑えると発表したすぐ翌年に公共料金の約20%値上げを実行し、一般市民の負担は増えるばかり。副収入がなければ食べていけないことも、その副収入が正確に申告されないことも、日本の高度成長期のように賃金の上昇率がインフレに追いつかないためなのです。

 社会主義崩壊直後、年率50%以上のインフレは落ち着いたとはいえ、1998年のインフレ率は13.5%とまだ高く、(2000年予想8%)身近な例で言えば地下鉄やバス等の公共交通機関の乗車券が、1997年3月60フォリント、1999年3月で90フォリント、実に2年間で50%増の現実があります。

 また1989年以降、自国製品の国際競争力の欠如により廃業に追い込まれた工場が多く、逆に値段の高い外国製品に依存せざるを得ない状況が物価高の原因の一つにもなっています。更にそれらの製品に高額の関税がかかるという悪循環。たとえば洗剤や歯ブラシ、トイレットペーパーなどの日用雑貨は、日本のディスカウントショップの方がずっと割安に感じられますし、電化製品も然り。その代わり食料品であるジャガイモ、タマネギ、ニンジン、トマト、肉類、牛乳などは価格が抑えられており、品質はともかく、日本の2分の1から5分の1くらいで購入できます。

 このように賃金格差が激しければ当然提供される品物やサービスにも格差があります。

 欧米諸国や日本から来た観光客やビジネスマンが快適に満足いく品物・サービスを手に入れる場合、最低でも西側の2分の1から、ことによっては欧米より高くつく場合があります。(電話料金やこのサーバーへの接続料など日本より高い)

 ハンガリー人にとって比較的いい給料を獲っても、日本や欧米各国の生活水準に到達するにはまだ不十分だと言えます。

 日本企業に勤め、通訳などをしている20代前半のハンガリー人で月給額面30万フォリント(1999年3月のレートで約16万2千円)、税引後17万フォリント(同9万2千円)です。これはかなり高額な給料でハンガリー国内で生活するには十分な金額です。しかし西側製品が巷にあふれる中、果たして満足いく額と言えるのでしょうか? 2000年版へ


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