物価 2000年版
    2005.Nov.

 毎月、国内経済情勢などを発表しているハンガリーの経済企画庁に当たる機関の資料は、目の当たりにするハンガリー人の実生活と何と異なっていることか。“人々の暮らし”を垣間見ることができる綿密な統計や調査が行われる先進国、西側諸国とは違い、中進国にありがちな“裏事情”。ハンガリーの“公式政府発表”からは見られない実質の物価、経済事情を生の目で見て、肌で感じた観点からご紹介いたします。
 
 経済企画庁からの一般的な資料をめくってみると、1998年のGDP$4650が1999年には$4808へ、失業率も2000年上四半期は、1999年同時期より0.4%低い6.5%へ、2000年のインフレ率においては8%予想(1989年崩壊後最低値)と数字の上では良いことずくめ。
 
 ではハンガリー人の実生活を直視してみると、果たして以上の統計のように一般市民の暮らし向きはよくなったのでしょうか?
 
 この一年あまりでも煤けた旧東欧のトラバント、ダッチア、旧型シコーダなどの自動車は西側の真新しい自動車にとってかわり、高級マンションやデパートの建設・計画ラッシュが次々と進められている様子は誰にでもわかります。マクロ的に見れば国に転がり込むお金は飛躍的に伸びていますが、“勝ち組と負け組”という日本で最近使われている表現がどうやらハンガリーにもぴたりとあてはまってしまう模様。
 
 つまり両者の差が広がる一方である事実。実際、数字をご紹介すると現在マクドナルドの募集広告上の時給は280-350フォリント(約100-125円)、靴工場の作業員の月給5万フォリント(約17800円)、一方ここでは勝ち組と言える友人が働くフランス系コンピュータ会社の技術職の手取りは27-28万フォリント(約9万6500-10万円)。2倍や3倍の給与格差などという開きでは収まりません。
 
 但し、本人の資質以外に会社の業績やシステムによって大幅に給与が変わってしまう(そもそも上司に嫌われたら最後)雇われの身よりも自ら仕事を創った方がまだ安定性がある人も多いわけで、東京都と同数の77万の法人が大中小の規模にかかわらずハンガリー中に散らばっています。

 嬉しいお給料の話の後は、余り嬉しくない出費と裏収入の話をごく簡単にご紹介。

 モデルケースとしてある家族の生活収支を挙げてみましょう。仮に夫婦と小学校に上がる前後の子供2人の家庭があるとします。90平米の持ちマンションに建物の管理費が7000フォリント、光熱費2万フォリント、電話代1万フォリント、食費(外食を抜かす)3万フォリント、外食・娯楽費3万フォリント、ガソリン代1万5千フォリント、諸雑費2万フォリントと一カ月に合計約12万フォリントの出費が予想されます。もし持ち家でなければ当然家賃がこれにプラス。それではこの家計を政府の公式発表による平均給与における“オモテ”の給料だけで賄えるか?

 ごく大雑把に言えば“No”。

 では賄えない分の差額を埋める生活費はどのように捻出されるのか?

 “ウラ”の収入で補うのでしょうか?つらい共産時代に耐えてきたハンガリー人、裏技はそこら中にはびこっておりますが、正規料金に慣れ過ぎている日本人には想像がつきません。

 一例をあげると長距離ワンマンバスで運転手からチケットを購入する場合、請求される額とチケット上に明記されている額が違うことがしばしば!支払った分との差額は運転手のポケットへ。(ハンガリー在住者からは序の口と言う声が聞えますが・・・)

 家にやってきた修理工のお決まりのセリフ、“領収書発行します?”発行すればÁFA(付加価値税:サービス・一般商品は25%)も追加で請求されるし、お断りすればこちらの支払いもお安く、修理工も帳簿に載せなくてすむため裏収入として丸々彼のポケットへ。なんだか両者共々お得な気分。(平たく言えば脱税行為) そしてこれも序の口の範囲。ハンガリーで生活するとごく自然に遭遇する裏金づくり。

 そして“帳簿に載らないお金”がこの社会でどれくらい流通しているか税務署は勿論のこと、誰も捕捉することはできません。これをなくしてはハンガリー一般家庭の収支は成り立たないのです。(正直になり過ぎると路頭に迷う?)全てのハンガリー人が裏金作りに精を出しているとは言いません。しかし少なくとも私の周りにいるハンガリー人で金銭的に(かなり)余裕のある人からその日暮らしに近い人まで、“オモテ”のきれいごとだけで生活をしている人は一人もいません。

 日本と比べればここは脱税天国。(日本も先進国の中では脱税天国と言われておりますが・・・)何を“オモテ”、なにを“きれい”というのか、ハンガリーでも日本でもよくわかりませんけれども。

 見せしめ的に税務署に申告漏れを指摘される零細企業は以前にも増して多くなりましたが、やはり日本のマル査同様何時になっても終わりのないいたちごっこのようです。

 最後にねじ曲がった物価上昇のお話。

 石油が殆ど取れないハンガリーでは信じられないことにガソリンが日本並みに高く、特に今回の世界的原油高沸はもろに輸送費に跳ね返り、ガソリンを使用する物流という観点から物価が押し上げられています。また対外貨レートが年間20-30%のフォリント下落とあい重なって輸入品という項目に入るだけで、国内生産された同一商品とは連動せずに価格だけどんどん上がります。

 国内生産の食料品自体の物価上昇率は毎年抑えられているにもかかわらず、農作物で有名なハンガリーの農家が大手の欧米食品会社と契約して良い製品をどんどん輸出してしまいます。そして国内向けに二流、三流の商品を出荷するために国内供給が不足すると海外から農作物を輸入する逆説的なことも残念ながら起こっています。(例えば主生産品のトマトをカナリア諸島から、オレンジを南アフリカからなど)また食料品を安定して供給できない生産管理のまずさが、多くの無駄と不必要な物価上昇を生んでいることなども容易に想像できます。 1999年版へ

 
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